毎年この時期、厚生労働省が昨年1年間の過労死などによる「労災」認定件数の報告を出します。
過労死してしまう人、仕事が原因で心を病んでしまう人は、なかなか減りませんね(精神疾患による自殺と自殺未遂で労災が認められる人は、毎年100人弱。労災申請をしない人、認定されない人を含めると、もっといるということです)。
心が弱ってしまうと、人間、なかなか正常な判断が下せなくなるものです。
「「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由」という本が今、話題になっています。
これはもともと、過労死寸前を経験した人が、当時の自分の状況を短い漫画にしたものが話題になり、それを元に素材を増やし、書籍化されたものです。
以前、その「短い漫画」を私もネット上で見ましたが、次第に追い詰められ、「死んだら楽になるんじゃないか」ということしか見えなくなってしまう様が、よく描かれていました。
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「もうダメだ」と思っている人は、視野が狭くなっている人
その漫画を読んでも思いましたが、「もうダメだ」と思っている人は、視野が狭くなってしまっている人なんですよね。
本当に過労死寸前で、「会社を辞めればいい」ということも分からなくなってしまっている人には、このブログの言葉なんて、なにも届かないでしょう。
そういう人には、とにかく近くの人の支えがあることを祈るばかりです。
でもまだ、そこまでの状況ではなく、「このままでいいのか、自分」と冷静に考えられる状態でしたら、もしかしたらこのページにもいくつかは、ヒントになることもあるかもしれません。
また、追い詰められて視野が狭くなっている人が身近にいるとき、支えになる言葉を口にする助けにはなるかもしれません。
そんな想いで、今日の記事は書きます。
視野を広げるために、まず知っておきたいこと
以前もブログに書いた言葉なのですが、イラン映画に出てくる、こんな言葉が好きです。
これは、自分の自殺を助けてくれる人を求めて旅している男に、旅先で出会った男が語る言葉です。その男も、以前、自殺を試みたことがありました。
あんたはトルコ人じゃないから一つ笑い話をしよう。怒らないで……。
トルコ人が医者に言って訴えた。
「先生、指で体を触るとあらゆる所が痛い、頭を触ると頭が痛い、足を触ると足が痛い、腹も痛い、手も痛い、どこもかしこも痛い」
医者は男を診察してこう言った。
「体はなんともない、ただ、指が折れている」
あんたの体はなんともない、ただ考えが病気なだけだ。
わしも自殺しに行ったが、桑の実に命を救われた。ほんの小さな桑の実に。
あんたの目がみてる世界は本当の世界と違う。見方を変えれば世界が変わる、幸せな目で見れば、幸せな世界が見えるよ。
この比喩、とてもうまいなと思います。
どこもかしこも痛いわけではなく、そこに触れる指が痛いだけ……。
「もうダメだ」と感じているとき、それは状況が本当にすべて「ダメ」なのではなく、判断する心が「ダメ」になっているのだ、と教えてくれる言葉だと思います。
すべてがダメだと感じられるときほど、深刻に悩むのをやめて、できるだけ心と体を休ませる時間を作ってみる。今は判断する心や頭が疲れているだけだと、割切ってみる。
それって結構大事だなと思います。
光を見つけるために、自分に問いかけて欲しいこと
そして少し心が落ち着き、「もうダメだ」と感じているのは、自分に余裕がなかったからだということに気づけるようになったら、冷静に、「次の一歩」を考えましょう。
そのためには、今が「すべてがダメ」な「ゼロ」ではなく、「1」か「2」くらいではあること、そして、「2」や「3」に進むステップも必ずあることを、自分自身で納得することが大切です。
是非、次のワークをしてみてください。
「もうダメだ」から抜け出すためのワーク
【1】まず、今、「ダメだ」と思っていること、「問題だ」と思っていることが解決された、一番理想の状態を思い浮かべてください。
【2】思い浮かべたら、その状態を「10」としてください。
そして、まったくダメ、問題だらけで全然いいことがない、という状態を「0」としてください。
【3】改めて、今の現状を客観的に考えてみてください。
今は、「0」~「10」のうち、どの段階ですか?
【4】「1」や「2」、もっと上の数字を挙げた方、いい感じです!
「0」 だった方へ。
本当に「0」ですか? なにかちょっとだけ「0」より進んでいることはありませんか?
たとえばパワハラ上司がいて、非常にしんどいという場合でも、一緒に励ましあえる同僚がいるとか、仕事自体は実は好きなものなのだとか、なにか「1」としてカウントできそうなものを探してみましょう。
どうしても職場で「1」が見つけられなければ、家に帰れば家族は温かいとか、良い友人がいる、など職場以外のところで「1」を見つけても構いません。
【5】では全員、「1」以上になったとして……
なぜ今、その段階なのですか? 「0」ではなく、「1」や「2」や「3」だったのは、どうしてですか?
それを考えるだけで、まずちょっとだけ視野が広がり、自分は0ではない、と、ふっと楽になるはずです。
【6】次に、「1」だった人は「2」に、「2」だった人は「3」にするためには、何が必要か、考えてみてください。
そして同時に、そのために使える資源は何かないか考えてみてください。
資源というのは、自分を助けてくれる人だったり、使えるお金だったり、使える道具だったり、頭の良さであったり、読んだ本だったり、今までの経験であったり、様々だと思いますが、本当に何でもいいです。
たとえば、職場にパワハラ上司がいて、しんどいという場合、「1」を「2」にするために必要なのは、「上司に怒鳴られる頻度を『毎日』から『2日に1回にする』」ということかもしれません。
そして、そのために使えるリソースは、「上司の上司と話そうと思えば話せる」ということかもしれませんし、「テレワーク制度を利用する」ということかもしれません。
もしくは、「『貯金』というリソースがあるから、会社を辞める」とか、「『転職に有利なスキル』というリソースがあるから、転職活動をする」という大きな一歩を思いつくかもしれません。
自分には使える「資源」があると思えると、少し光が見えるのではないかと思います。
もし興味がありましたら、「ソリューションフォーカス」で検索して、本など読んでみるのもお薦めです。
挫折があったから、今、輝いている人たちがいると知っておくこと
ハードな仕事で心や体を病んでしまう人には、「ここで仕事を辞めたらいけない」と無理に仕事にしがみつき、状況を悪化させてしまう人も多いように感じます。
そういう人には、鬱などの病気で会社を辞めたけれど、そのおかげで、今はフリーや社員以外の形態で、自分らしく、生き生き暮らしている人たちのことを知ってもらいたいです。
私が「素敵な仕事人」としてインタビューさせていただいた方の中にも、3人、鬱が原因で会社を辞めたけれど、今は、カウンセラーや、アート系のインストラクターとして活き活きと活躍されている方がいます。
そういう方は口をそろえて、「あのとき、鬱になるほど頑張ったから、今の自分がいる」「鬱は自分を助けてくれたのだと思う」と言われていました。
病気は、自分の体が生み出すものです。だから、戦わなければ、本当に大切なことを自分に教えてくれたりするんですよね。
私の場合は、心の病気ではないのですが、(多分)仕事のストレスで、肺に穴が開く気胸という病気に何度かなりました。
結構症状がひどくて、入院させられたとき、自分はまだまだ大丈夫だと頭では思っていたけれど、本当はそうではないのかもしれない、と気づいたりしました。
気胸自体は、別に命にかかわるような病気ではないのですが、気胸経験者はダイビングができなくなってしまうので、毎年夏に沖縄の離島で潜るのを楽しみにしていた私にとっては、結構手痛い代償でした……。
そこで学んだのは、体が悲鳴を上げる前に、もっと自分自身の本音と向き合う時間を取ることが大切だなということでした。
だから今は、「『もうちょっとできるかも?』と思ったときには、やめておく」という、あえてスローペースで働き、生きています(笑)
一度本気で頑張って、体や心を壊して、生活を変えた人の話を聴くと、きっといろいろ気づきがあると思います。
先に紹介した、カウンセラー・さわとんなどは月に2回ほど「軽く数時間お茶をしましょう」という「カフェありがとん」という集まりを開いているので、気軽に行ってみてもいいと思います。
時間を作って外に出るのが厳しければ、まずはこのサイトのインタビューを読むだけでも!
何人かのインタビューを読むと、順風満帆に、まっすぐ人生を歩んでいけている人なんて、あまりいないんだなということが分かると思います(笑)
でも、曲がりくねり、挫折し、あがき、迷いながら進んできた人ほど、深みがあって魅力的です。
だから、大丈夫なんです。あなたが今、あがいていても、迷っていても、傷ついていても。それは数年後、周りの人を照らす光になります。
まとめ:「もうダメだ!」と思ったときの対処法
- 本当につらい時には、とにかく人に話を聴いてもらいましょう。
つらいときは、人は視野が狭くなっています。
あなたより、周りの人のほうが、きっとあなたの周りにある可能性を見つけてくれるはずです。 - 本当につらいときには、その場から離れるという選択肢もあるということを覚えておきましょう。「離れる」ことは、「逃げる」こととは違います。
- まだ少しでも余裕があれば、まずは「自分は今、視野が狭くなっているだけではないか」と冷静に自分自身を振り返ってみましょう。
- そしてできたら、記事の中で紹介しているソリューションフォーカスのワークを試してみてください。少し希望が見つかるはずです。
- 色々な人の人生に触れてみましょう。他の人の人生も、あなたが思っているよりずっと紆余曲折あり、挫折あり、迷いありの人生のはずです。
- だからあなたも大丈夫なのだと、信じましょう。
- そう思えないときは、自分の理想の人生に近い人生を歩んでいそうな人に会い、話を聴いてみましょう。
なにか参考になることがあれば、幸いです。
迷いの中にいる人にこそ、いろいろな人の、本当に様々な生き方に触れてもらいたいです。