心のなかの傷ついた小さな子どもと一緒に暮らしていかれるようにするのが目標:臨床心理士・吉田美智子さん

はこにわサロン 吉田美智子さん

今日は素敵な起業家として、はこにわサロン代表・臨床心理士の吉田美智子さん(みこさん)をご紹介します。

みこさんは、36歳まで、複数の外資系企業で、マーケティングマネージャーとしてバリバリ働き、そのあいだにテンプル大学大学院で経営学修士まで取得されている、とても優秀な方なのですが、お会いしてみると、非常に謙虚で、静かな雰囲気をお持の、カウンセラーらしい佇まいの方でした。

みこさんは、マーケティングの世界で活躍しながらも、36歳でその世界から離れ、38歳から臨床心理を学び始め、40歳から10年間は、臨床心理士(カウンセラー)として活動されています。

なぜ38歳で思い切ったキャリアの路線変更をし、昨年49歳で独立したのか、インタビューではその想いを聞かせていただきました。

多くの会社から「うちに来てください」と言われたマーケティングマネージャー時代

みこさんは専修大学文学部英米文学科を卒業したあと、しばらくは派遣社員として働いていました。始めは英語ができるということで、外資系企業の秘書に、そのあと、マーケティングの事務職になります。

みこさん

そのとき、マーケティングは面白いと思った。事務ではなくて、マーケティングをする側になりたいという野心が芽生えた。

当時私がいた会社は保守的で、女性は事務、マーケティングは男性がするものという考え方が一般的だった。でも、私は、共同で事業をすることになった相手先の会社に「マーケティングをしたいのです」と訴え、マーケティング部のアシスタントマネージャーとして、ひっぱってもらうことができた。

それが25歳の頃だったそう。非常に積極的に人生を切り開かれていて、すごい!と思うのですが、みこさん本人は「実力ではなく、無理やり頼んで入れてもらったようなものだったから、実力をつけないとと当時は必死だった」と語られ、そこでも「全然、すごいなんてこと、ないのよ」と謙遜されていました。

でも、その後、実務でも実績を積んで、実力をつけ、さらにテンプル大学大学院の経営修士も取り、マーケティングマネージャーとして、活躍を始めます。その頃、みこさんは複数回転職していますが、

みこさん

コカ・コーラ社でマーケティングに携わっているといったら、どこの会社でも、うちに来てくださいと言われるような状態だった。

そうです。

この頃のことをみこさんは、「私の社会的価値が一番高かった時期」と表現されていましたが、でも、徐々にマーケティングの世界に違和感も覚え始めます。

 

徐々に大きくなる違和感。そして……

みこさん

2年間かけて経営学修士をとったけれど、そこで感じたのは、“私は10年後、この世界にいないだろうな”ということだった。利益だけをどんどん追求していくような資本主義一辺倒のその世界の価値観に、私は入り込めなかった。

それでも経営学修士を取ってしばらくは、ドイツやフランスの会社で働いてみたけれども、一度感じた違和感は消えなかった。

それで、あるとき、ふと「なんか、疲れたな」と感じてしまった。16年突っ走ってきて、それなりに結果も出したし、半年くらい休んでもいいんじゃないか、という気持ちだった。

フランスの企業を辞めたときには、「半年くらい休んでも、すぐにまた仕事は見つかる」という思いもあったそうです。でも、半年休んでも、みこさんは、次の一歩をどう踏み出すべきか分からず、しばらくは迷いのなかにいました。

みこさん
当時は本当、いろいろ悩んでいて、熊野古道に何度も何度も通ったりしていたなぁ。

ということでしたが、働く意欲がわかなかっただけで、「案外元気にラテンダンスを習ったりもしていたんだけど」とのこと。

みこさんは、非常にまじめな人に見えて、奥にちょっと天然っぽい癒し要素もあります(笑)

そして、そのラテンダンスの教室に行く途中で、大きな出会いがありました。

みこさん

ダンス教室の前に時間があったから、図書館で本を見ていて、河合隼雄先生の本を見つけた。『人間の深層にひそむもの』というタイトルのゲド戦記についたエッセイなのだけれど、ゲド戦記の魔法使いが“真の名前を探す”ことと、臨床心理士が問題のコアを見つけることは似ているというようなことが書かれていた。

たとえば子供はニンジンを食べない、母親はどうしても食べさせたいというとき、ニンジンを刻んで料理に混ぜて食べさせるという“魔法”を使うこともできる。でも、ふたりでよく話し合って、お互いに「たかがニンジンのことじゃないか」と思えるようになることのほうが、真の魔法に近い。そんな真の魔法をつかうのが、臨床心理士だ、と書かれていた。

それを読んだとき、どうしたら臨床心理士になれるんだろう、と考えていた。

そして、そう考えたみこさんは、大学院に行って、臨床心理士の資格を取ることを決めます(臨床心理士になるためには、大学院に2年通う必要があります)。学校は、河合隼雄先生の考え方に近い、ユング派の勉強ができるという理由で、東洋英和の大学院を選びました。

結婚、出産、スクールカウンセラーに

みこさんは、臨床心理士の勉強をするために通っていた大学院で旦那さんと知り合い、結婚し、40歳で子供を出産します。

そして、子供を育てながら、臨床心理士(カウンセラー)としての一歩を踏み出すことになりました。

クリニックのカウンセラーとして働いていたこともあるそうですが、それは短期間で、長くは保育園・小学校・中学校でのスクールカウンセラーとして活動されています。今も、週に3回は都内や埼玉県の中学校に出向き、子供や親の相談に乗っていらっしゃるということです。

でも、自治体から雇われて「スクールカウンセラー」として活動するだけでは、限界も感じるということ。

その限界というのは……

  • 臨床心理士の本質はクライアント側に立つことだけれど、スクールカウンセラーの仕事の場合、先生の想いをくみ取らなくてはいけない場面も多い(「学校に来るようにしてください」というような的外れなことを言われても、上司の命令なので、無視もできない)。
  • 本当はケアしてあげなくてはいけない人に、ケアが届かないこともある
  • 学校でのケアでは、時間や回数が限られてしまうから、本来ならもう少し待って変化を見守りたいところでも、介入していって、表面的な解決を行わなくてはいけないことがある

など、自分がよいと信じていることとは違うことをしなくてはいけない場面もあるということだそう。

そして、昨年、みこさんは思い切って、仲間と一緒に、青山に「はこにわサロン」を開きます。

「はこにわサロン」は、箱庭療法をメインにしたカウンセリングを行う場所です。

箱庭療法というのは、箱の中に砂を敷きつめ、その砂をいじったり、砂の上に人形やフィギュアを置き、自分の心のうちを遊びながら表現していくなかで、自分の心の問題と対話し、ゆっくり問題を溶かしていく療法です。

箱庭療法については、「はこにわサロン」のブログのためにみこさんが作られた動画で分かりやすく解説されているので、ここでも紹介させてもらいます。

 

はこにわサロンに来るクライアントさん

遊部香

はこにわサロンに現在いらっしゃっている方は、どんな方が多いのですか?

みこさん

「箱庭療法」という言葉で検索して見つけてきてくれる方が多い。

箱庭療法という言葉を知っているくらいだから、いろいろな治療法を試してみた方などの比率も高い。

ブログには中高生のことをよく書いているから、不登校の子を持つ親が多いのではないかと思われがちなのだけれど、実際には、20代~50代と幅広く、「このまま仕事を続けていていいのだろうか」とか「もう仕事を続けていく気力がわかなくなってしまった」というような方がクライアントさんには多い。

遊部香
気力がわかなくなってしまった……。うつ病などですか?
みこさん

はこにわサロンでは、普通に対話をするいわゆるカウンセリングもしているけれど、箱庭の体験から入って、そのまま箱庭療法を続けている人も多い。

箱庭療法を選ぶ人のなかには、あまり自分の想いを言語化したくないとか、今はできないと思っている人もいるし、通常のカウンセリングのように、事細かに現状や問題を聞き出すことはしないこともある。

だから、何回も来てくれているけれど、はっきりと原因を聞いていないクライアントさんもなかにはいらっしゃる。こちらから問いかけても、話したくなさそうにされている場合は、箱庭を見て、「多分、こんな問題を抱えているのだろうな」となんとなく分かかったとしても、それを私のほうから「こういう問題があるんですか?」と無理に聞き出したりもしないから。

遊部香
なるほど……。そういうものなんですね。
みこさん

色々な療法を試して、どれも合わなくて、ここに来たという人の中には、「もう話すのはいい」と思っている人も少なくない。

大抵、初回のカウンセリングで、自分の抱えている問題や過去のことなどをたくさん話して、それでも解決には至らなかったわけだから。

確かにそうですよね。でも、言われてみれば、確かにと思えても、なかなか相手の課題を聞かずに、じっとそばに寄り添うって難しいですよね。それができるのは、みこさんのカウンセラーとしての資質のように感じました。

みこさん

「今まで頑張ってきたのだけれど、急にやる気が出なくなってしまって……。今までは頑張れたのに、なんでだろう?」という人は、今まで無理してきた人。本当は傷ついているけれど、適応だけは良くて、誰にも相談できず、一人で抱えて頑張ってきた人。

本当なら、もっと幼いころに周りの人が傷に気づいて、ケアしてあげるべきだったのに、周りの人に余裕がなかったりして、しっかりケアされず、傷が保留されてしまったまま、大人になってしまった。そんな無理した状態で、頑張ってはきたけれど、無理をしているわけだから、ある日、電池切れになってしまう。それで、「昨日までは頑張れたのだけれど、もうこれ以上、頑張れない……」となってしまっている。

ここに来てくれる人には、そういう人が多いし、私も、そういう人の助けになれたらと思っている。

なるほど。素敵ですね。

過去の心の傷の問題にはどう対応する?

遊部香
子供のころの心の傷を抱えている人は、結構多いように思うのですが、箱庭療法やユング派では、心の傷にはどう対処するという考え方なのですか?
みこさん

心の傷があるというのは、傷ついたままの小さな自分が心の中にいるような状態。

その傷ついた小さな自分を追い出せば、強い自分になれるんじゃないかと思う人もいるかもしれないけれど、私たちはそうは考えない。そうではなくて、自分のなかに傷ついた小さな自分がいることを認め、その訴えを聞いてあげることが大切だと思っている。

訴えを聞いてあげれば、傷ついた小さな子供も、少しずつ落ち着いてくる。その小さな子供はいなくなりはしないけれど、その傷ついた子供と一緒に平和に暮らしていくことができるようになる。

私たちが目指すのは、そこ。

駆け出しの頃のカウンセリングで受け持った子は最初のころ、1時間のカウンセリングの時間、一言も話さなかったり、私も最初はどうしていいか分からない状態だった。でも、手探りでカウンセリングを続けていって1年ほど経った頃、その子はこう言った。

「自分の問題は最初、とてもごちゃごちゃしていて、大きくて、つかみどころがなかったけれど、1年経って、今は、こうなりました」

その子は小さなかわいい妖怪のフィギュアを見せてくれた。

「これくらいになったから、これから一緒に暮らしていけるような気がします」

それが私のカウンセリングの原点だと思っている。しっかり問題を見つめ、心の傷に耳を傾けてあげることで、問題は小さく、扱える形のあるものになっていく。

そこまでになるのに1年とか、数年とか時間がかかる人もいる。時間や手間はかかる手法ではある。でも、この手法の良いところは、一度解決したら、それから先はもう、助言も継続的支援も必要でなくなること。問題が一度、小さなかわいい妖怪レベルになったら、もうあとは本人が、対処できるから。

確かに、そういう「じっくり相手の変化を待ち、じっくり向き合うカウンセリング」は、スクールカウンセラーの仕事の範囲では難しそうですね。

自分の正しいと思うやり方でカウンセリングをしたいという想いでサロンを開いたみこさんの気持ち、とても分かりました。

これから力を入れていきたいのは

先に書いたように「頑張りたいけれど、頑張れない」状態になってしまった人のことも支援したいと言われているみこさんですが、それ以外にも今後力を入れて支援したい人もいるそうです。

みこさん

もともと私が臨床心理士の資格を目指したのは、36歳という「そろそろ人生折り返しか?」というときにあったつまづき体験が元だった。それを心理学では「人生後半の問題」ともいうけれど、当時の私のような、「後半の人生、どうしよう」と悩んでいる人を支援できたらという思いは、やっぱり強い。

それから、子供のカウンセリングにも力を入れていかれたらと思う。今は、子供より、子供を持つ親のほうにスポットライトを当ててしまっているけれど、子供の頃の心の傷は、子供の頃に癒せたら、それが一番いいから。

だからいずれは、箱庭療法だけではなく、子供たちがもっと飛んだり跳ねたりなど、体全体を使ったプレイセラピーができるような環境も整えられたらと考えている。

遊部香
「過去の心の傷」を持つ大人は多いですが、その傷を子供時代に癒せていれば、あとで問題にならないわけですものね!

大切にしているのは、守ること

遊部香
仕事をしているなかで、一番大切にしているのはどんな想いですか?
みこさん

箱を大事にすること。箱というか、器。

箱のなかは自由だけれど、でも、守られている場所でなくてはいけない。

それと同じように、この「はこにわサロン」というこの場所自体も、安全だと感じてもらえる場所にしたいと思っている。

今はこれ以上過去と向き合うときじゃないよ、と感じたときには、それを止めたりもする。

それから、作った箱庭には、本人も気づかない心の奥の状態が表現されていることもあるから、自分では気づかないで、傷を人に見せてしまう危険があると思う。だから、箱庭体験をした人に、「SNSに写真をアップしてもいいですか?」と聞かれても、「心のことだから大切に、プライバシーを守る方向でいきましょう」と伝えるようにしている。

そう伝えると、クライアントも理解してくれるし、やっぱり、クライアントの心は守りたいから。

そうやってしっかり危機管理ができるのが、ただのカウンセラーではない、「臨床心理士」という資格を持った人間だと思うし。

遊部香

格好いい!

資格を持っていないカウンセラーのなかにも、良いカウンセラーはいると思いますけれど、臨床心理士の資格を持ったカウンセラーというのは、信頼度がまた上がりますよね。

みこさん

そう思ってもらえるといいのだけれど。

でも今は、臨床心理士というのは、なんだかお高くとまっていて、いけ好かない奴という印象を持っている人も多いかもしれない。

臨床心理士の世界では、「一人前の仕事をして、認められてから初めて、独立開業はできるもの」というような暗黙のルールがある。だから私もスクールカウンセラーとして9年働いたくらいで、自分のサロンを開くことに抵抗もあった。

でも、臨床心理士の資格を持っている人が、もっと、本当に困っている人の身近にいる社会にならないとダメじゃないかと私は思っているから、思い切って独立してみた、というのもある。

すごいですね!

とても謙虚で、物静かな雰囲気を持ちながら、強く出るところは強く出る、その多面性が、みこさんの魅力の1つでもあるように感じます。

そんなふうに、物静かで、穏やかで、じっと相手の変化を待つ辛抱強さと、その奥に秘めた熱い想いをもったみこさんなら、心の傷にも寄り添ってくれるはずです。


「なんだかやる気がでない」「過去の心の傷が悪さをする」「人生折り返し地点だと感じて、未来が不安になる」「子供が問題を抱えている」など、お悩みをお持ちでしたら、まずは相談されてみてはいかがでしょうか? 話すのが嫌なら、黙々と箱庭を作るだけでも、いいと思いますよ!

★吉田美智子さんの「はこにわサロン」 https://hakoniwasalon.com/

ブログには、思春期の子供を持つ親が直面しがちな問題についても多く書かれていて、3歳の子を持つ私の胸にも響くものがあります。

まずはブログを読んで、みこさんの考え方に触れてみてください。

みこさん

悩んでいることは、実は財産です。

悩みを捨てるのではなく、あなたの一部にし、本当の財産にするためのお手伝いをさせてください。

執筆者:遊部 香(あそべ かおり)



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