人生につまづいたと感じても、そこからジャンプすることはできる:PRプランナー・小室梨佳さん

今日は素敵な仕事人として、プロモーションプランナーの小室梨佳さんをご紹介します。

小室さんも、以前ご紹介した中小企業診断士の楊さんと同じく、中小企業庁が行っている行政サービス「よろず支援拠点」のコーディネーターのお一人です。
楊さんのインタビューのあと、「わたしのことも支援してください」とよろず支援センターに電話を掛けたら、小室さんが担当になってくださいました。

小室さんは、今まで100人以上の経営者・起業家のPR支援・経営相談などに乗ってこられた、「宣伝」「広報」のスペシャリストです。インタビューでは、波乱万丈な人生がうかがえて、非常に興味深かったです。

小室さん自身、「人生につまづいたと感じても、そこからジャンプすることはできると、自分の人生から伝えることができたら」とおっしゃっていましたが、本当に人生、何があるかわからないから面白いのだなと思います。

是非、インタビュー、お読みいただけたら!

Contents

周りの人から「無謀すぎる」と言われた決断

小室さんは、非常に若いときに結婚、出産、離婚を経験され、若い時期のほとんどを「シングルマザー」として生きてこられたそうです(今は再婚されています)。

最近は、シングルマザーの道を選ぶ人も多く、私の知り合いにもたくさんいますが、でも、女手一つで子供を育てないといけないというのは、非常に大変ですよね。

特に小室さんは、就職する前に結婚、出産をされたということで、小さな子供を抱えながら、社会人生活を一から始めなくてはいけない状況でした。

普通に考えたら、そのような環境では、「とにかく仕事を見つけて、安定的な収入を得る」ということを選ぶと思うのですが、小室さんは違いました。

小室さん
アルバイトを2,3年して、お金を貯めて、オーストラリアに留学をした。まだ5歳の息子を連れて。

え?? オーストラリア? という感じですし、実際、親戚や友人から「英語もろくに話せないママが、小さな子どもと長期留学なんて、無謀すぎる」と反対されたそうですが、小室さんには、しっかりとした考えがありました。

小室さん
英語が話せるようになって、これから必要とされるIT系の勉強をすれば、短期間で即戦力になり、このまま就職先を探すよりもよい条件で仕事を見つけられるのではないかと思った。

そして、小室さんは情報処理系の専門学校を選び、留学しました。

小室さん
子供にもグローバルに考えられる人間になってもらいたいと思っていたから、一緒に留学をしたかった。

そして、私はその当時は英語が得意だったわけではないから、英語だけで勝負する世界より、ITと英語を掛け合わせたほうが必要とされやすいのではないかと思って、情報処理系の専門学校を選んだ。

楊さんの話を聴いたときも、自分にはない計画性を感じましたが、小室さんの「先を見て、計画し、その通りに一歩一歩進んでいく生き方」もさすがだな、と思いました。

小室さんは、「とにかくこの子を自分の手で食べさせていかなくては、という想いがあったから」と言われていましたが、人間、追い詰められたときに発揮できる力というのはすごいですよね。

周りの人の意見より、自分の直感を信じる勇気が道を開く

そして、日本に戻ってきた小室さんは、想定通り、英語×ITの知識が生かせる職場を見つけます。

それは、ITの外資系企業をクライアントに持つ広告代理店の仕事でした。

小室さん
かなりハードな仕事だったけれど、ここで仕事に必要な基礎力を身につけさせてもらったと思っている。
段取りをいかに組むか、データをどう効率よく管理するかから、企画、提案、リスクマネジメントまで、本当に幅広く学んだ職場だった。

あまりにハードな仕事で、体を壊してしまい、その会社は3年で辞めることになりますが、ここで自分は「マーケティング」や「企画」の仕事が向いているのだということが分かったそうです。

小室さん
2社目は、外資系の医療機器メーカーに入社した。
インプラントの製造・輸入・販売をしている会社のマーケティングの担当として入社し、マーケティングコミュニケーション部の立ち上げメンバーにも加わった。

そこでは患者さんの早期離床・回復のために、リハビリのやり方などを教育する「エデュケーションプログラム」の日本版を開発し、整形外科に実際に導入してもらうための、マーケティング活動全般を行っていた。
この頃、会社の取り組みをどうメディアに取り上げてもらうかという広報活動にも力を入れていた。

その会社に10年勤め、さらにマーケティングや企画、広報の経験を積んだということでした。

小室さんが、外資系企業のマーケティング・企画・広報などに携われたのは、やっぱり、周りから「無謀だ」と言われても、子供を連れてオーストラリアに留学したという決断が大きかったのではないかな、と感じます。

小室さんはインタビューの後半、「ふっと頭に浮かんだことは、導かれているということだと思うから、できるだけそれに従うようにしている」と言われていましたが、そういう、周りの人の意見より、自分の直感を信じる勇気が、人生を大きく変えるのかもしれませんね。

息子が成人したのを機に

2社目の医療機器メーカーに勤めてからしばらく経ったころ、小室さんは再婚し、息子さんも成人しました。そのとき、小室さんはふと思ったそうです。

小室さん
なにか一つやり終えた感じがした。
それで、もう一度自分の好きなことにとことんこだわってみたいというか、もう一回周囲の人から「無謀だ」と言われるくらいのことをしてみたい、という想いが湧いてきた。

そして自分のやりたいことに近いことができる自由な社風を感じたベンチャー企業に転職しますが、そこでさらに「私にも起業できるのではないか」という想いが湧き、そのままほとんど迷うことなく、独立を決めたということでした。

このときも、ふと湧きおこってきた「起業してみようか」という思いつきのような想いを大事にして行動したとのこと。

小室さん
私は人生の分岐点ではいつも何かに導かれてきたように思う。
だから、分岐点でこそ、本能に従って、気になる方に素直に進んでいいんじゃないかと思う。

なるほど。

行政の仕事をする価値

独立した小室さんは、今までの経験を活かし、広告・広報全般のコンサルティングをメインのサービスに活動を始めますが、それとほぼ同時に、先に書いた行政の仕事(よろず支援拠点のコーディネーター)も依頼され、今はその仕事にも力を入れていらっしゃいます。

遊部香
行政の仕事に力を入れているのに理由はあるのですか?
小室さん
それまでは広告代理店と外資系企業という「資本主義」の色合いの濃い社会にいた。
それで、利益ばかり追求する資本主義の社会に、少し疲れてしまったのかもしれない。

行政の仕事をしていると、「みんなで頑張ってみんなで勝つ」ということができそうな気がする。

例えば広告の世界は、広告代理店が広告を出す企業からのお金の多くを取ってしまって、実際にクリエイティブな仕事をしているデザイナーやライターなどにあまりお金が回らないという現実がある。
私はそれを少しでも変えたいと思っている。

行政の窓口である私が広告代理店のようにあいだに入ることによって、中間のマージンを取ることなく、クリエーターに正当な対価を支払うことができる。私は広告代理店で働いていた経験もあるし、自分自身でライターのように動いていることもあるから、クリエーターが物を作るときにかけている労力も分かる。だから、広告やWEBを作りたいという経営者に、妥当な金額を払ってもらうように言うこともできると思っている。

私一人の働きでは、社会全体は変わらないかもしれない。でも、自分の周りからだけでも変えていきたいと思っている。

素敵です! 本当に世の中を変える人というのは、大きなことを言っている人ではなくて、自分の周りにある「できること」をコツコツとやっていける人なのかもしれません。

小室さん曰く「PRプランナーの仕事というのは幅が広いから、今、私はよろず支援センターの、まさによろず相談窓口になっている感じ」ということで、週3日は千葉県よろず支援センターにいらっしゃるそうです。

遊部香
もし「商品はいいはずなのに、売れない。どうやって売ったらいいのだろう」など、お悩みをお持ちの方がいたら、よろず支援センターに相談してみてくださいね!
仕事が欲しいクリエーターの方も、一度足を運んでおくと、タイミングが合えば仕事を紹介してもらえるかもしれません!

(小室さんは、千葉県担当のコーディネーターですが、よろず支援拠点は各都道府県にありますので、管轄の都道府県のよろず支援拠点に連絡してみてくださいね)

そしてこれから力を入れたいのは保育と教育

そんな小室さんが最近力を入れているのが、保育士と介護士の育成です。

といっても、自身で育成をするわけではなく、オーストラリア政府が認定する保育士・介護士育成のための専門学校「First Base Training」の日本窓口になって、留学したい人のサポートをする仕事を始めたのだそうです。

小室さん
私は5歳の子供を連れてオーストラリアに留学した。オーストラリアは日本より義務教育の始まる年齢が1年早く、息子は小学校に入学した。オーストラリアでは日本語の授業もあるし、日本に関心も深い国だから、私もそこで日本文化について授業をさせてもらったりもした。

それで感じたのは、オーストラリアの子供たちの多くは表情豊かで、礼儀正しく、先生をリスペクトし、多文化を受け入れる寛容さも持っているということ。

日本に帰ってきて、息子は日本の小学校に通い始めたけれど、私は日本の教育には違和感を覚えた。

今、日本では保育士の離職率が高い。それは給料が低いというのもあるだろうけれど、「なにか違う」と思ってやめてしまう人も多いのではないかと思う。

だから、子供が好きで、やる気のある人にオーストラリアで質の高いチャイルドケアを学んでもらい、それを日本に持って帰ってきてもらえたらと考えた。

今後、少子高齢化がますます進み、外国人の保育士や介護士が増えていくだろうけれど、そんな未来に必要なのは、外国の文化についてある程度理解でき、英語のスキルがあり、外国人スタッフの上に立ってマネジメントできる人だと思う。そういう人を育てるという視点もある。

楊さんも最近、塾の経営に乗り出し、「教育」に携わられたというお話でしたが、ある程度自分の事業を軌道に乗せたり、資本主義的な仕事はやりきったと思った人は、「教育」に行き着くのかもしれませんね。沖縄にリトリートスペースを作ると移住されたビジネスコーチの下田直人さんも、ある意味「教育」ですし。

遊部香
私もその域まで行きたいなぁ。

小室さんは、この取り組みを「昔お世話になったオーストラリアへの恩返しでもある」と言われていました。「オーストラリアは懐の深い国で、当時は経済的に厳しかったから、それを訴えると、子供の学費を免除してくれたり、制服を支給してくれたりした」とのこと。
そんな恩の循環もいいですね。

起業に向く人・向かない人

よろず支援拠点で100人以上の経営者・起業家の相談に乗っている小室さんにも、起業について聞いてみました。

遊部香
起業に向く人、向かない人はいますか?
小室さん
飽きっぽい人は向いていないんじゃないかな。起業をするのは簡単。書類を一枚出せばいいだけだから。

でも、起業して成果を出すまでには時間がある程度かかる。成果が出るまで、どれだけ努力を継続できるか、出た成果を維持できるか。そこには我慢強さがやっぱり必要だと思う。

あれもしたい、これもしたい、もいいけれど、パワーを分散させるのももったいない。これと決めたことをコツコツ続けられる人のほうが成果を出しやすいんじゃないかな。

遊部香
なるほど。
小室さん
あとは、「やりたいこと」も大切だけれど「得意なこと」というのも大切。自分の「得意なこと」というか、「強み」を客観的に把握できている人は、起業に向くと思う。
遊部香
起業したいと思っている人に、アドバイスはありますか?
小室さん
起業してどうしたいのか、書き出してみることを薦めたい。

事業計画書を作るのも大切だけれど、それとは別に、もっと自分の本音の部分で、自分はいくらくらい稼ぎたいのかとか、自分の強みは何なのかとか、分析してみる。

本音で書いてみると、案外、稼ぎよりもやりがいを自分は大切にしているんだと気づいたりする。そんなふうに、まず自分自身とちゃんと向き合ってみる。

あぁ……なんか、分かります。私もつまらない仕事でならお金はもらわなくてもいいや、と思うタイプかも……。ま、ハングリー精神に欠けている人間なんです(^_^;)

遊部香
フリーで働くために、大切なことは何だと思いますか?
小室さん
人間関係かな。
人を大事にしないと、フリーでは仕事ができない。

良い人間関係を築いても、それがすぐに仕事に結びつくわけじゃない。むしろ、仕事につなげてやろうという野心が見える人には、みんな近づかないから。
でも、きちんと人間関係を構築できたら、それは5~10年後に花開く。
フリーで働いている先輩の姿を見ていると、そう分かる。

確かにそうですよね。
フリーであっても、フリーでなくても人間関係は大事だと思いますが、フリーで働いていると、「友人」が仕事上の「パートナー」になったり、「お客さん」になったり、逆に自分が「お客さん」になったりもして、より関係性が深まって楽しいようにも感じます。

小室さんにもたくさん、素敵なお話を伺うことができました。
小室さんは、1社目の広告代理店で「だんどりを学んだ」と言われていた通り、このインタビューに備えて、しっかりメモを作ってきてくださり、そんな真面目に準備してきてくれる人がいるなんて!と感動でした(笑)

お忙しいなか、本当にありがとうございました!


★小室さんの「アズーム・ピーアール」

プロモーションの仕方にお悩みの方、そして未来の日本を担う保育士・介護士を目指している方、是非小室さんにコンタクトを取ってみてくださいね!

「アズーム・ピーアール」のサイト → http://azoompr.com/

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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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