今日は素敵な仕事人として、いちかわメディカル&ファーム代表・山本聡子さんをご紹介します。
山本さんは、物心ついたときから、ぜんそくとアトピーというアレルギー症状を持ち、病人生活を送っていましたが、ハーブティーと出会ってから、人生が好転し始め、今は「農と医の融合」を目指して活動されている魅力的な方です。
今もアトピーが完全に治ったわけではなく、去年も「頑張りすぎて、しばらく動けなくなった」とも話されていましたし、完全な「健康体」ではないのかもしれません。
でも、「患者だからこそ分かることがたくさんある。それを発信しないと」という想いで動かれている山本さんは、とても生き生きしていて、素敵でした。
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メディカルハーブとの出会い
先にも書いたように、山本さんは子供の頃からアレルギー症状がひどく、小学校の頃はぜんそくのため、3分の1くらいは登校できないほどだったそうです。
それくらいひどいアレルギ体質ですから、ずっと通院と薬から離れられない生活を送っていました。
ただ、病院の薬だけでは良くなる気配はなく、自分で民間療法を調べて、試行錯誤もされていたそうです。
でも、そんなことをしていると、病院ではお医者さんに、「そんなことをしても意味がない」とか「決められた通りにやりなさい」と叱られるだけでした。
そして山本さんは、結婚後、病院通いを一切やめます。
結局、病院から離れたことも、劇的な変化をもたらすことはなかったそうです。
しかし、アンドリュー・ワイルの本を読んで、感銘を受け、その後出会った「薬学ハーブ」のテキストがアンドリュー・ワイルの著書を元に作られていると知ったことから、薬学ハーブの世界に入り込んでいきました。
それが山本さんの大きな転機になりました。
アンドリュー・ワイルの「癒す心、治る力」については以前もちょっと書いたことがありますが、私も大好きな本です!
原因のよく分からない気胸を繰り返していたとき、バイブルのように読んでいました。
簡単にいうと、薬は治る手助けをするものであって、体にはきちんと治る力があるから、それを最大限働かせなさい、という本で、具体的な生活方法や、難病から治った人の例が紹介されています。
五感でハーブを感じたい
薬学ハーブに出会った山本さんは、薬学ハーブについて自分でも勉強すると同時に、ハーブ外来にも1年通い、自分の症状がハーブティーで改善することも身をもって体感します。
またその頃には、山本さんの心も現代医療を頑なに拒否していた頃とは少し変わって来ていて、17年ぶりにまた病院にも通いはじめたそうです。
そして気づいたのは、17年間で病院や医療の現場も変わってきているということだったとか。
以前は頭ごなしに否定されていた民間療法についても、やってみたらと言ってくれる先生にも出会えた。
そうやってパソコンのモニターや医学書だけではなく、患者さんの顔をしっかり見て、患者さんの気持ちを理解しようとしてくれる先生が増えていったら、医療ももっと変わるのに、と思う。
漢方ソムリエの田辺さんも似たようなことを話されていたな、と思いました。
そして少数であっても、きちんと患者を診てくれる先生もいて、ちょっとずつでも、その数は増えてきているのかもしれませんね。
そんなふうに、現代医療の力も借りつつ、ハーブの力にも出会った山本さんですが、
この頃は、カモミールの成分は、〇〇で、化学式はこうなるから、こんな効果が出る、という勉強が主体だった。
でも、カモミールの化学式を知るより、カモミールがどんな形をしていて、どんな香りで、実際に飲むとどんな味なのだろうということのほうが大事なのではないかと思ってきた。
確かに、そうですよね。
そんな折、いちかわの「つくるんだ村」という畑のコミュニティーに参加していた山本さんは、そこのリーダーだった方から、「畑の一画にハーブを植えてみたいんだけど、ハーブの勉強をしているんでしょう? 今日からハーブ隊長に任命する」と、畑の一画を任されることになりました。
ハーブの勉強をしているといっても、本当に机上のものでしかなく、育てたことなどなかった山本さんですが、とりあえず教科書に載っていた20種類のハーブをそろえ、育て始めます。
それが、本物のハーブとの出会いでした。
つくるんだ村では8年ほどハーブを栽培していた。
去年はこうだったから、今年はこうしてみよう、という繰り返しでしかなかったけれど、やっていれば、やり方は少しずつ分かってきた。
数や年月を重ねることによって得られるものは大きいですよね。
そして、4年ほど前、今の場所を借り、つくるんだ村とは独立した「いちかわメディカル&ファーム」として、活動を始めました。
アレルギーアドバイザーとしての活動
山本さんはそれと同時に、自身がアレルギーを持つ人間として、「アレルギーを持った人」「アレルギーのある子供を持つ人」とのコミュニティーづくりも大切にしています。
子どもが小さかった頃は、アレルギーのある子供を持つママの会(アレルギーと楽しく向かい合う会)を作り、情報交換することにも力を入れていました。
食物アレルギーの場合、それを食べたら命にかかわる問題だから、子どもを守りたい親の心は、外に向かう。だから、社会に訴える力が強い。
でも、アトピーの場合は、少し話が違う。
一つの食べ物が命に係わるということはないけれど、肌がボロボロになったり、見た目に症状が現れるというのもあって、アトピーを持った人や、アトピーを持った子の親は、シャッターを閉じて、閉じこもってしまうことが多い。
自分の子どもがアトピーだと、義理の親にも見せられなくて、誰にも相談できず、鬱々としてしまうお母さんも多いと分かった。
それに、たとえばシャンプー一つとっても、アトピー持ちは、自分が使えるシャンプーを見つけるのに、ものすごく苦労をする。たくさんの労力とお金をかけて、自分に合ったシャンプーを見つけている。
でも、同じアトピー症状を持った人同士で情報交換できたら、その労力やかけるお金がもっと少なくてすむかもしれない。
そういう意味でも、ひきこもらず、自分の気持ちを語れる場を作るという意味でも、アトピーやアレルギーを持った人の交流の場というのは、本当に大切だと思っている。
「アレルギーと楽しく向かい合う会」は、当初のメンバーの子どもたちが大きくなってきて、活動は縮小方向だということなのですが、山本さんは、そこで培った経験を生かし、今は「日本環境保健機構 環境アレルギーアドバイザー」になり、企業にアレルギー持ちの人に優しい商品の提案をしたり、日本環境保健機構と組んでアレルギーさんによるアレルギーさんのための情報サイト「アレルギーらいふ」というサイトを立ち上げたりされています。
アレルギーらいふでは、「食物アレルギー対応バスツアー」など、リアルなイベントも開催していますが、アトピーなどがひどかったり、アレルギーを持つ小さな子供がいて外に出られない人にも交流の場をということで、ネット上での情報提供や交流にも力を入れられています。また同時に、症状を抱える当事者や家族との橋渡し役として、新しい価値の商品開発や社会の環境づくりの実現も目指しているということでした。
是非、アレルギーをお持ちの方、アレルギーのお子さんをお持ちの方は、会員登録をしてみてくださいね(登録無料)。
https://allergylife.jp/
患者が、患者だけをしている場合じゃない
そんなふうに、山本さんは、現在進行形でアレルギーに悩まされているとは思えないくらい活動的な方なのですが、その根底にはこんな想いがあるようでした。
当事者である私たちが持っている情報には、価値のあるものがたくさんあると思う。
たとえば、アトピー持ちの人のためにシャンプーを持ち込める美容室が欲しいとか、症状がひどいときでも肌に優しい下着が欲しいとか、言ってみたら「そんなの簡単にできる」となるかもしれないけれど、ニーズを把握されていないから、現状、世の中にないサービスや商品というのも多いはず。
そういうのを私たちが声を出すことによって、実現していけるんじゃないかと思う。
それに医療のこともそう。アンドリュー・ワイルさんも、統合医療というのは、医者と地域のセラピストと患者の3者が協力することで可能になると書いていたけれど、患者だからこそできる情報発信があるし、さらに患者自身がセラピストになって次世代の同じ疾患に悩む方々の力になれると信じている。
患者が、患者だけをしている場合じゃない。
格好いい!
山本さんは、基本的にはほんわりとした、優しいイメージの方なのですが、奥にはやっぱり他の素敵な仕事人と似た熱い想いがあるのだと感じました。
健康になることを目標にしているうちは、健康になれない
また、山本さんのもう一つ核となる想いに、
「楽しくしていないと、病気は治らない」
というものがあるようにも感じました。
山本さんが元気になっていったきっかけとしては、ハーブとの出会いが大きかったということなのですが、それはただ、「ハーブを飲んだら、良くなった」という単純なものではないそうです。
私の体を良くしてくれたのは、「みんなでつくる安全な野菜やハーブ」「作業による運動」「季節を感じながらの自然との対話」「楽しい仲間とのコミュニケーション」など、畑での活動全部だった。
以前は本当に、完治を目標に生きていた。早く健康になりたい、健康になれば、もっと色々できるのに、と思いながら、家で何もできずにいた。
でも、発想を変えて「同じ10年なら、もっと楽しんでいきないと損」と思って、人生を楽しむことを考え始めたら、健康に近づいていった。
それで分かったのは、楽しく生きていないと、健康になんてなれないということ。
確かに、そうですね。
身体の不調に目を向けていたら、不調はなくならないけれど、治すことを諦めて、他のことに夢中になっていたら、自然と不調は「気にならなくなる」。治るのではないかもしれないけれど、「気にならなくなる」。重要ですよね。
体に不調のある人は、家にいたら、一日中でもずっと症状を気にして落ち込んでいる。
だから、とにかく気分を変えるということがすごく大事。
アトピーがひどいと、陽に当たるのも良くないし、土に触るのも難しいかもしれない。
でも、畑に来てハーブの香りを感じるとか、とれたてのハーブでハーブティーを飲んでみるとか、それだけでも、気分は変わる。
だから多くの人に、実際に家から出て、来てもらえる仕組みを作りたいと思う。
少しの迷いと、次へのステップの模索
ただ現状、いちかわメディカル&ファームのイベントに、深刻なアレルギー症状に悩む方はあまりいらっしゃらないそうです。
そのため山本さんは、いちかわメディカル&ファームの活動が、過去の山本さんのような、「ハーブによって、もっと人生を大きく変えられるであろう人たち」に届ききっていないような、もどかしさは感じているということでした。
ハーブの活用の幅は本当に広い。料理、お茶、スキンケア、リースや押し花などのクラフト製作、染色など、生活に彩りを添えることにも、もちろん、使える。でも、それだけではなく、健康維持や疾病予防といった、幅広い分野にも活用できる可能性を持っているのがハーブの魅力だと思う。
私自身は、ハーブを実践的に生活に取り入れながら、自分の体と向き合うことで、自分の体も生き方も変えられたと思っている。だから、健康な人だけでなく、心身の不調を感じている人にも、もっとハーブを活用してもらい、畑コミュニティーを通じて、楽しい人生というものに触れてもらいたいと思っている。
以前の私のように、自分が楽しめることを見つけて、元気になっていく人が、この場で増えていってくれたら、私はとても嬉しいし、そういう場を作ることが、自分の魂が本当に喜ぶことなんじゃないかと、最近、思い始めた。
だから、これからは「いちかわメディカル&ファームの活動」と「アレルギーの人の声を社会に届ける活動」をもっと融合させられたらと思っている。
もうしばらくは、その仕組みづくりに模索していくことになるとは思うけれど、少しずつ形を変えながら、本当に魂が求めている仕事をしていこうかな、と。
ということで、「まだちょっと模索中」のときにインタビューさせて頂いちゃったようですが、きっと、これから「アレルギーらいふ」の活動も活発になり、うまく「メディカル&ファーム」とつながっていくのではないかな、と思います。
これからの活動も楽しみです♪
◆山本聡子さんの活動
・いちかわメディカル&ファーム
アレルギーを持った方向けのイベント、一般の方向けのハーブイベントなどをされています。
「ハーブや野菜の栽培、収穫して活用するまでの楽しみ方を年間スケジュールを組んで、イベントや講座、セミナーを企画してみなさんにご提案しています。自分だけのスペースを確保して農作業を楽しむメンバー、ハーブ栽培のボランティア作業に関わる方、定期講座や単発講座に参加してくださる方、ご近所さんとの気軽な交流を生む、畑コミュニティーとしての役割を果たしていると思っています。
中でも引きこもりの子供たちを支援するNPO団体との共同作業や、認知症の心配のあるご高齢の方が畑作業を通じて明るく元気にされている様子を見るのは、大変嬉しい限りです」
とのことです! 興味のある、お近くの方は、是非、コンタクトを取ってみてくださいね。
http://medicalfarm.areraku.net/
・アレルギーらいふ
アレルギーに苦しんでいる方は是非、交流の場・情報交換の場として活用してください。
また、アレルギーを持った方と情報交換をしたい企業や、イベントのスポンサーになってくれる企業も募集中とのことです。是非、コンタクトを取ってみてください。
https://allergylife.jp/
インタビューは、初めて、屋外で♪
私、広い公園のベンチとか好きなんですよね~。落ち着きました。
そして、ポットでお湯を持ってきてくださり、摘みたてのハーブでハーブティーを作ってもらいました。むちゃくちゃ、おいしい!
「東京だと、これで1500円とかして、びっくりする」と山本さんは言われていましたが、畑で摘みたてハーブティーを飲む体験なんて、1500円以上出してもいいと思う人、結構いるんじゃないかなぁ。
瓶にハーブを詰めこんで、そこにオリーブオイルを満たした「ハーブオイル」(上にいちごと一緒に写っている瓶)もお土産に頂きました♪
2週間くらい置いておくと、料理に使えるらしい。2週間後、遊部家の食卓がちょっとおしゃれになる予定(笑)
山本さん、ありがとうございました!
◆是非、他の素敵な仕事人インタビューもお読みください!
→ 素敵な仕事人の定義と一覧
17年間、病院に行かず、病院の薬も使わなかった。
ただ、それで体調が良くなったわけでもなく、一進一退を繰り返していた。
体調が悪いときには、寝込んでしまって、外に出られないようなことも珍しくなかった。