「すぐに仕事を辞めないで」シリーズ(?)第2弾は、介護離職について。
政府が「介護離職防止」に昨年からかなり力を入れてきているというのは、社労士業界では有名な話なのですが、きっと普通の人はほとんど知らないだろうと思います……。
働きながら育児をすることは大分当たり前になり、「育児休業」があるというのはほとんどすべての人が知っていると思いますが、この「育児休業」は、何で定められているかというと、
「育児介護休業法」
という法律によってなのです。
つまり、「育児」だけでなく「介護」が必要になった場合にも、「休業」って取れるんです。
ま、育児ほど長期間ではないんですけどね。
でも、最大で93日。つまり約3か月。
やはりこれも制度を知っているか知っていないかの差は大きいかと思います。
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なんで93日なの?
育児休業は原則1年ですが、介護休業は最大で93日です。
93日で介護が終わるはずはないのですが、これは、
「介護が必要になってから3か月もあれば、施設に預けるとか、ホームヘルパーを頼むとか、方針が決まって、その準備が整うでしょう」
という意味での93日です。
今までは、たとえば10日間母親の介護のために休んでしまったら、残り83日あっても、同じ家族のために再び介護休業を取ることはできませんでした(一度回復して、再び違う病気で介護状態になったときを除く)。
でも、今年1月1日から法律が改正され、
3回を限度として分割して取得可能
になりました。ちょっと優しくなりましたね。
介護休業中は賃金の約67%がもらえます
たとえば家族が倒れ、看病が必要になった場合、最初は有給休暇を消化すればいいと思うのですが、「これは、すぐに回復して今まで通りになるというものではなさそうだ」となると、いよいよ「介護」という問題が生じてきます。
介護休業は、家族が「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」となった場合にとることができる制度です。
そうなった場合は、会社の上司や人事と相談して、正式に「介護休業」をとるか相談し、できればきちんと取得するといいと思います。
介護休業ということになれば、会社からお金はもらえなくても、雇用保険から「介護休業給付金」というものがもらえます。
大体月の給料の3分の2ほどです。
※昨日書いた「病気やけがで仕事ができないとき」にもらえるお金は「健康保険」から出るものでしたが、こちらは雇用保険です。つまり、健康保険に入っていないパートなども対象になる可能性がありますが、正社員でない場合、1年以上雇用されていることなどの条件があります。
また、家族に介護が必要になった場合、休業しないまでも、短時間勤務にしたり(これも93日が上限)、残業を免除してもらう(こちらは介護が終わるまで)ことができると法律にはきちんと定められています。
どうしても今まで通りに仕事ができそうもないとなったら、上記の法律をしっかり理解し、上司や人事部と相談することをお勧めします。
※育児介護休業法についてわかりやすくまとめられたパンフレット
※今年1月からの改正内容
介護の問題は他人事じゃない
これから少子高齢化が進み、家族の介護をしながら働く人は着実に増えていくと予想されています。
だからこそ、政府も「介護離職」を防ぐために、法律を改正したり、助成金を新たに作ったり(社員が介護休業後にしっかり復帰したら、会社がお金をもらえる制度。そうすることによって、会社も社員に介護休業を取ってもらいやすくなりますからね)しているのです。
でも、親が元気なうちは「介護」など他人事だと思ってしまいますよね。私もそんな一人ではあるのですが、知り合いに2人ほど、親の介護のために仕事を辞めた経験を持つ人がいます。
その2人ともが、介護のために仕事を辞めたことを後悔するような発言をしていました。
きちんと付き添いきれ、親孝行を仕切れて満足だったという想いも当然あると思いますが、親孝行は仕事を辞めなくてもできるかもしれません。
介護は育児と違い、最後は「死」で終わることがほとんどです。いつ終わるかわからない長いトンネルを、悪い場合は介護が必要な家族とただ2人だけで歩き続け、そして、相手の死で幕が閉じます。その死の悲しみから徐々に立ち直ってきたときに、自分には仕事がないということに気づくのです。
介護の問題に詳しい産業医の先生も言われていました。
介護される人のことも大切だけれど、介護する人の人生も大切。
まずは自分の今の社会生活をできるだけ守りながらできることを探してほしい。
と。
介護と仕事を両立しようとすると、今までのように全力で働けなくなり、それがもどかしくなったり、周りの人に迷惑をかけているように感じたりするかもしれません。
(小さな子供を育てながら働いている人も、多くはそういう感情を抱いているはずです)
でも、介護の問題は、育児の問題以上に、誰にとっても「他人事」ではありません。迷惑をかけることもあれば、掛けられることもあります。
周りに迷惑をかけられるのが組織で働いている(もしくは、社会とつながっている)人間の権利であり、周りの人の迷惑をこうむるのが義務でもあるのかもしれませんね。
そんな温かい空気があればいいのにな、と思います。
※実際に家族の介護が必要になった場合、利用できるのは介護休業制度だけではありません。
家族の介護保険もありますし、「地域包括支援センター」などこれからの介護をどうしたらいいか相談に乗ってくれる機関もあります。
まずは内閣府の「「仕事」と「介護」の両立 ポータルサイト」を見てみるといいと思います。
※これは2017年1月11日現在の情報です