勝ち負けがない世界だからこそ、自分で勝ち負けを判断するシビアさが必要:シナリオライター花村宗冶さん

花村宗冶さん

今日は素敵な仕事人として、シナリオライターの花村 宗冶(はなむら そうや)さんを紹介します。

花村さんとは、イラストレーターの茶谷さんAccess&web制作の田川さんと同じく、もりちゃんを囲む会(作家・森沢明夫さんを囲む会)で知り合いました。

そこでは、軽い話をしたことしかなかったので、最初は「面白いノリで、ちょっと癖のある関西人」というイメージしかありませんでした。

でも、花村さんが脚本を書いているというラジオドラマを聴いたら、とてもしっかりと人間の描かれた、ハートウォーミングな内容なので、そのギャップにやられました(笑)

そしてインタビューでじっくり話してみると、びっくりするぐらい真面目!というか、ものすごい真摯に仕事や表現、モノづくりに向き合っていることが分かり、非常に圧倒されました。

花村さんからは「仕事を楽しむヒント」というより、「仕事と向き合う姿勢」を教えてもらったように思います。

是非、インタビュー、お読みいただけたら!

Contents


高校時代に役者になることは決めていた

花村さんは若いころから映画を見るのが好きで、特に「男はつらいよ」にはまっていたそうです。

「男はつらいよ」を全巻見るためにTSUTAYAでバイトをしていたようなものだった。

というほど。

「男はつらいよ」はある意味、ものすごくマンネリな構成なのに、それでもあれだけ見る人に支持されて、続いた。それはすごいことだな、と。

確かに、言われてみると、そうですね。

「人間ドラマ」だけで見る人を引っ張るのは難しいと思う。武器が少ないから。「刑事もの」「医療もの」などのほうが、観客を引き込みやすい。だから、テレビドラマも多くは刑事もの、医療ものになってしまうんだと思うけれど。

でも自分は、「人間ドラマ」だけで勝負したいと思っていて、その想いは、この頃から変わらない。

そんな「人間ドラマ」に惹かれた花村さんは、寅さん(渥美清)のような役者になることを目指し始めます。

将来の夢を伝えたとき、お父様は反対しなかったそうです。ただ「大学までは出ておけ」と言われ、花村さんは大阪で大学に通います。

普通ならここで大学4年間、演劇に没頭して過ごしそうなものですが、花村さんは違いました。

大学時代は、とにかく視野を広げることを最優先しようと思って。

それで演劇の勉強はまったくせず、ホノルルマラソンを走ったり、度胸をつけるために“これからタイムサービスですよ”という口上を述べて回るDJという仕事をしたりしていた。

この視点、すごいです。

いよいよ上京し、役者デビュー

大学卒業後、花村さんは鞄一つで大阪から東京に出てきます。

住込みのアルバイトがあるだろうという軽い気持ちで出てきたものの、なかなか住込みの仕事は見つからず、しばらくはオールナイトの映画館で過ごしたり、新宿で野宿したりという生活だったそうです。

その後、アパートを借り、オーディションに受かって個人事務所に入り、アルバイトをしながら役者としての活動を始めます。

そして、1995年に映画「きけ、わだつみの声」でデビューします。

デビュー作から1か月のフィリピンロケだった。

周りには織田裕二さん、的場浩司さん、 鶴田真由さんなどそうそうたる顔ぶれがそろっているし、このまま僕も売れるんじゃないかな、と思った。

確かに、非常に順調なデビューのように見えます。

その後も、所属した事務所がアクションを得意とするところだったのもあり、数多くのVシネマに出演もされたそうです。

ただあるとき、花村さんは壁にぶち当たります。

いい役が来たときに、自分は芝居ができない、ということに気づいた。

何本も映画に出てからそんなふうに気づくというのも、花村さんの真面目さだなぁと思うのですが、そう気づいた花村さんがどうしたかというのも面白く、

で、いまさら養成所に入るのもなと思ったから、舞台で芝居を一から身に付けようと思った。

それで、事務所を辞めて、劇団に入った。

のだそう。花村さんの人生の選択は、結構ユニークですよね。

ついに自分の劇団を旗揚げ

花村宗冶さん事務所を辞めた花村さんは、オーディションを受けてアングラ劇団に入りますが、一公演で違和感を覚えてそこを抜けます。

その後は、筒井康隆さんの作品を舞台化した「筒井ワールド」のオーディションを経て、「筒井ワールド」をプロデュースしている事務所「ビッグフェイス」にしばらく所属しました。

その時期には、「幸せづくり」という昼ドラのレギュラーの役をオーディションで勝ち取るなどもしたそうです。
wikipediaの「幸せづくり」のページには、花村さんの名前もちゃんと載っていました!)

その後は、様々な劇団に客演したり、オーディションで参加したりしながら、役者生活を送ります。ただ、

小劇場の芝居には、自分でどうしても“これはいい”と思えない作品もあって……。

友達を呼ぶと来てくれるのだけれど、“今回の作品はいまいちだったでしょう? ごめんね”と言いたくなるようなものも多かった。

でも、せっかく友達が来てくれたのに、そんなことは言えない。

だったら、何を言われてもすべて自分の責任だと思えるように、自分が作・演出までする劇団を作ろうと思った。

そして2004年に劇団「かやくごはん」を旗揚げします。「かやくごはん」は2013年の秋に解散してしまうのですが、それまで12作品、花村さんがすべての作品の台本を書き、演出もしました。

途中1年半の休止時期はあったそうですが旗揚げから解散まで約9年間。本当に大変な9年間だったのでしょう。

花村さんは、劇団の旗揚げをしたという話になると「それが間違いだった」と言い、初演の舞台が好評だったから第2回の公演を決めたという話になると「それがいけなかった」と……劇団の話の部分では、花村さんのネガティブなワードが増えました(^_^;)

私は大学時代の2年間、ほんのちょっとだけその世界に触れただけでしたが、劇団ってほんっっっとうに大変だと思います。劇団員も大変だけれど、それをまとめる主宰の大変さは、想像しただけで、半端ないです。

そんな役回りを9年・12公演もやったというのは、それだけで尊敬に値します!と、個人的にはかなり強く思うところです。

劇団の解散:前に進むために、自分の「負け」を認める

でも、花村さんは劇団の解散について

敢えて、“負け”と言っている。

とのこと。

花村さんは先に紹介したように、今は「役者」ではなく「シナリオライター」として活動されているのですが、そのきっかけは、今の所属事務所(シナリオライターや演出家が所属する事務所)の人にスカウトされたからだそうです。

花村宗冶さん花村さんが主宰する劇団「かやくごはん」の芝居を見て気に入ったというのがその理由だったと言います。

つまり、「かやくごはん」の芝居は(残念ながら私は見ていないのですが)、プロが認めるほどのきちんとした作品だったということなのでしょう。

でも花村さんは、劇団がメジャー化するには、何かが足りなかったと言います。

僕は映画が好きだったから、舞台の上で映画みたいなものを作ろうとしてしまっていたんだと思う。

それで役者とはよくぶつかったし、お客さんが求めているものとも違ってしまっていたのかもしれない。

そして9年もやってブレイクしないのなら、やはり何かが間違っているのだという結論に達し、解散を決めたそうです。

たとえば、ボクサーなんかだったら、勝ち負けは分かりやすい。というか、勝ち負けしかない。

どれだけ練習したかなんていうことは、まったく関係ない。勝ってなんぼの世界。

表現の世界は勝ち負けじゃないと思われているけれど、でも、だからこそ、自分で勝ち負けを判断しないといけない。

表現の世界の第一線で活躍している人は、勝ち負けの判断をシビアに行ってきた人だと思う。

結構、衝撃的な言葉でしたが、非常に説得力も感じました。

最近、この素敵な仕事人のインタビューをしたり、周りの仕事人を観察したりしていて思うのは、小説家とか画家とか、一般的に「好きなことを仕事にできていいね」と思われがちな職業の人の方が、他の仕事をしている人より、実は楽しそうに見えないということ。

なんでだろう、と思っていたのですが、花村さんの言葉で謎が解けたように思いました。

花村宗冶さんそれはきっと、自分で「勝ち負けの判断をシビアに行わないといけないから」なんでしょうね。だから、楽しんでいる場合じゃないのです、きっと。

それに、生活に必要な物を売るのと違って、芸術とか「生活に潤いを与えるためのもの」を売るのはやっぱりハードルが高いから、そういう意味でも厳しい世界なのでしょう。

花村さんの今の仕事に対する姿勢からも、その世界の厳しさと、自分の仕事と真摯に向き合う大切さが分かりました。

嘘を書かないことを大切にしている

劇団解散後、花村さんは役者は「休業」し、今はシナリオライターとして活動されています。

※月曜日20:30~21:00に文化放送で放送されている「青山2丁目劇場」で大体月に1回の頻度でシナリオを書かれているので、是非、聴いてください!

はじめにも書いたのですが、花村さんの書く作品は、人間の描写がとてもリアルで、人に対する温かいまなざしを感じます(たまに、関西人っぽいコメディーもありますが)。

先月は初めて、前編・後編に分かれる大作に挑まれたのですが、若年性認知症になった妻と介護する夫の関係性や、妻と夫それぞれの未来を描いた深いドラマで、厳しい状況のなかでも明るい兆しを感じさせるラストは、特に秀逸でした。

そのリアルさや、温かさはどこから来ているのかなと思っていたのですが、インタビューのなかに、そのヒントがありました。

僕は徹底的に取材をしている。

それは、嘘に気づいたとき、人は没入から醒めると思っているからでもあるし、当事者を傷つけないためでもある。

当事者……。なるほど。

以前、知り合いの舞台を見に行ったら、阪神淡路大震災に関係する台詞があった。僕自身はあのとき東京にいたけれど、やはり関西の人間だから、あの震災は他人事ではなかった。

だから関西の人間ではない知り合いが書いた台詞を聞いたとき、違和感を覚えて、不快に思った。ここで安易にその台詞を入れる意味はあったのかと。

でも僕も自分が体験していないことを書いたら、人にそう思わせてしまうかもしれない。

だから、今回の作品を書くときには、認知症の人がいる施設に取材を兼ねたボランティアに行きたいと連絡して、実際に認知症の人と接してきたし、同性愛者の話を書いたときには、当事者にしっかり話を聴いた。

花村さんのラジオドラマにきちんと血が流れているように感じたのは、花村さん自身がしっかりと追いかけていた「リアルさ」によってだったのですね。

また花村さんは、1つのドラマの構想に3日ほどかけ、

悪いときは、3日間ひたすらパソコンの前に座って、何も書けずに終わる。

というくらいとにかく真剣に作品に向き合っているそうです。

僕は書くのが遅いし、効率は良くないと思う。でも自分は、目の前に来た仕事を大切にしていくだけだと思っている。

花村さんの仕事に対する姿勢は、本当に自分の刺激になりました。というか、色々反省させられました……。

花村さんは今はまだ、そんなにメジャーな作家ではありませんが、これからものすごい有名なシナリオライターになると思いますので、要注目です!

「『青山2丁目劇場』のときから聴いてました♪」というと、将来、ポイント高いですよ!

まだ次回の日程は決まっていないようですが、マメにチェックしておきましょう!
>> 青山2丁目劇場

※花村さんは本名でfacebookもtwitterもされているので、フォローするのもお薦め。

花村さんからもらったしあわせに生きるヒント

そんなふうに1つ1つの仕事にじっくりと向き合う花村さんは、正直、決して「楽しそうに仕事をしている」という感じではなく、むしろ身を削って作品を生み出している感じです。

でも、つい眉間に皺を寄せてパソコンに向かい続けてしまう毎日だからこそ、気をつけていることがあるそうです。

それは、

毎日1回は『ありがとう』と『好き』という言葉を使うこと。

『ありがとう』は人を良い気持ちにする言葉。

『好き』は自分を良い気持ちにする言葉だから。

なるほど~。

「ありがとう」を言おうというのは、色々なところで聴く言葉ですが、「好き」が自分を良い気持ちにする言葉という発想は初めてで、新鮮でした。

でも確かに、「この花、好きだわぁ」とか、「このコーヒー、好きだなぁ」とか口にすると、なんか心がほっこりしますね。

気持ちが沈んだときや、張りつめているときほど、「好き」探しはいいかもしれません!

フリーランスでやっていくために大切なこと

花村さんにも「フリーでやっていくために大切だと思うことは何ですか?」という恒例の質問をしてみました。その答えは……

異なった業種の人と接すること。

他の業種の人と接することで、ライターとしては取材になり、自分の武器が増える。でもそれだけではなくて、視野が広がったり、新しい可能性に気づけることもあるそう。

花村さんは最近、異業種の友人からの誘いで、VR(バーチャルリアリティ)の勉強会にも参加し始め、VRのシナリオライターの仕事にこれからの未来を感じているのだとか。

VRは、3次元の映像で編集できない。途中で止めて指示を出すこともできないし、間違っても止めるわけにいかない。

そういう意味では、非常に演劇的。

だからこそ、可能性を感じている。

なるほど。確かにそうですよね。

花村宗冶さんもしかしたら花村さんがブレイクするのは、ラジオではなくてVRでなのかもしれませんが、どちらにしても、数年のうちに有名人になっているはずです!
(ちなみに花村さんはラジオドラマを「脳内VR」と表現されています)

是非、気になった方は花村さんをフォローして、次のラジオ番組の情報をゲットしてください。
今すぐにVRのシナリオが欲しい方は、直接、問い合わせてみてもいいと思いますよ!


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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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>> メインサイト「凪」



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