心の奥から湧き上がってくる感覚を大事にすれば、間違わない:コーチ・社労士 下田直人さん

下田直人先生

今日は、素敵な仕事人として、ビジネスコーチでもあり、社労士でもある株式会社エスパシオ代表の下田直人さんをご紹介します。

下田さんは、私が社労士として開業準備をしていた頃(10年ほど前)から、「就業規則コンサルタント」として有名な社労士でした。

当時から他の社労士よりも広く社会を見る目を持った素敵な方で、いつかこのブログにも登場いただきたいと思っていて、今回ようやくその念願が叶いました!

もはや「社労士」という枠には収まらない、下田さんの働き方とビジョンからは、今までとはまた違った「働く」意味が見えてくるように思います

是非、インタビュー、お読みいただけたら!

Contents


社会保険労務士になるまで

下田さんは大学卒業後、一般企業(小売業)に就職しますが、初めから「ずっと会社員でいる気はなかった」そうです。

それで会社に入ってすぐ、
「200万円貯めたら会社を辞めよう」
と決めて貯金をし始め、2年半経って200万円が貯まると、きっぱり仕事は辞めました。

辞めたあとは、
「北海道に1か月、南米に2か月旅行した。そのあと、ぼんやりと飲食店でも始めようかな、と思っていた」
そうです。

しかし、ある日、本屋で、たまたま資格の本のコーナーが気になり、棚を見ていると「社会保険労務士」という言葉が目に入ってきて、本を手に取ってみました。

その時はじめて「人事を専門にする資格があるのか」ということを知り、何となく興味を引かれたと言います。

そして「資格を獲るなら、若いときの方がいいかもしれない」と思い、社労士の勉強を始め、2年で合格します。

で、「資格を獲ったからには、せっかくだから社労士の仕事をやってみよう」と思った、というのが、下田さんが社労士になったきっかけでした。

ただ、「2年半の会社員経験しかない28歳が、すぐに経営者から大きな仕事を任せてもらえるはずはなく、8月に開業して12月までの最初の年の確定申告は、売上が13万円だった」という苦労もしたそうです。

就業規則コンサルタントとして活躍

下田直人先生の本社労士の仕事というのは幅が広いのですが、重要な仕事の1つに就業規則を作ったり、改訂したりする、というのがあります。

下田さんは小売店に勤めていた頃、店の責任者もしていたので、現場での採用にも関わっていました。それで、「就業規則」にはそれなりに馴染みもあったそうです。

そこで下田さんが思ったのは、

就業規則は、もめ事を起こさないためにルールを明確にしておくもの、と思われがちだけれど、もっと生産性を上げるために使うこともできるツールなのではないか。

ということでした。

当時は、メルマガを発行して、そこから「小冊子をプレゼントします」と誘導していく手法が流行っていた頃で、下田さんも、「生産性を上げる就業規則の作り方」をテーマにしたメルマガを発行し始めます。

そのメルマガが、社長を中心に2万人近く読者がいるメルマガに取り上げてもらえます。

それによって、1日1件あればいいほうだった問い合わせが、1日に200件来るようになったりした。これが一つの転機だった。

そうして、社員をルールでしばるための就業規則ではなく、会社の理念を社員に伝えるツールとしての就業規則を作っていく、という「就業規則コンサルタント」としての仕事が軌道に乗ります。

その後は、就業規則に関する本を次々出版するなど、大躍進を始めます。

法律どうこうではなく、経営者の「あり方」についての語り相手

shimoda2初めから、「会社と社員のための就業規則を作る」というサービスを入り口にしていたからか、

「お客さんには、いい会社が多くて、もめ事はあまり起こらなかった」そう。

下田さんは、ソングレターアーティストの安達さんとも知り合いなのだそうですが、下田さんがされていたのも、安達さんが言う「定義して、発信する」ことだったのかもしれませんね。

下田さんは以前から、年に1回、一人でホテルに籠って「来期の経営戦略を立てる」と話されていました。

ただ、経営戦略といっても、数字のことはほとんど書かず、内容は「自分や自分の会社がどうなっているのがいいのかという大きなビジョン」と「そのためには、どんなお客さんに、どんなサービスを提供していったらいいのかというイメージ」が主なのだそうです。

そうやって、しっかり自分の理想とする顧客像を明確にされているのも、下田さんが順調に成功されていっている理由なのかもしれないな、と感じました。

下田さんとほぼ同期の社労士・桑原先生も「顧問先も長くなると、ほとんどトラブルは起こらなくなる」と言い、

今は、ほとんど社長の話を聴いている。話を聴いて、一緒に悩んで、短いアドバイスをちょっとしてみるくらい。
理想は、お坊さん。……本当、お坊さんになりたいなと思うよね。

と話されていましたが、下田さんも、今は、

経営者とは、法律に則ってどうという話ではなくて、仕事のあり方とか、どう生きていくか、どう経営していくかというスタンスについて語り合っていることが多い。
僕もそれが好きだし。

ということで、経営コンサルのような、経営者のコーチングのようなことをメインで仕事をされているそうです。

本当に相手のためになるアドバイス

下田さんはコーチングの資格もとり、正式なコーチとしても活躍されていますが、こんなことも話されていました。

コーチの資格をとる前から、やっていることはあまり変わらないかもしれない。
以前、就業規則を作ったときに、そこの社長にこんなことを言ってもらった。

「下田さんは就業規則を作る打ち合わせのあいだ、“何を大切にしているんですか?”“創業時の想いを忘れていませんか?”など、何度も根本的で、大事な問いを投げかけてくれていた。
就業規則を作っているあいだ、下田さんはずっとコーチングをしてくれていたんだと思う」

ただ、コーチングの勉強をしたことで、今までは無意識でやっていたことを、しっかり意識化し、意図的にスキルを使えるようになったという話でした。

下田さんには、知識やスキルがどうこうという以前に、問題の真理をしっかり見つめられる才覚があるのかもしれないな、と感じました。

それは、下田さんが話してくれた、こんな具体例からも分かります。

たとえば、社員を辞めさせたいんだけれど、という相談は、社労士として仕事をしていたらゼロではない。

社労士として、そういう問題に対処しようとしてしまうと、“やめさせるには、30日以上前に言わないといけませんよ”とか“こういう理由で辞めさせる場合、判例ではこうなっているので、危険ですね”とか、そんな手続きや法律の話になってしまう。

でもそういう話をする前に、“なんで社長はその社員を辞めさせたいと思っているのか?”“社長の内面は今、どうなっているのか?”を確認することが大事だと思う。

社長がその社員を辞めさせたいと思っているのは、社長が克服できていない過去のトラウマのせいなのかもしれない。社長の心の奥にある原因によって、問題に立ち向かう気力がなくなって、問題から逃げるために社員を辞めさせたいと思っているのかもしれない。

そこをまずはっきりさせることで、その社員を辞めさせなくてすむこともあるし、辞めさせる結果になっても、トラブルなく辞めてもらえることが多い。

私も一応社労士なのですが、この話を聞いて、「ほぉ~」としか言えない感じでした。

私を含め凡人は、「社労士なんだから、法律的なアドバイスをしたほうがいいんだろうな」などと、期待されているであろう役割を読んで、その通り振舞ってしまうことが多いと思います。

でも、本当に必要なのは、相手の期待に応えることより、「一番、相手のためになる行動をすること」なのだと、下田さんの話からは、学んだ気がしました。

魅力的に見える人はみんな、「常識の枠」から自由です。

沖縄に移住?!

沖縄そんなふうに、社労士としても、コーチとしても、経営コンサルタントとしても活躍している下田さんですが、昨年(2015年)6月に突然、沖縄に引っ越します(写真はイメージ)。

もちろん、下田さんのなかでは「突然」ではなく、社労士法人を合併させ、社労士事務所の代表から退任して、信頼できる仲間に社員を託したり、様々な準備をされていたのですが、facebookなどでゆるくしか繋がっていなかった人間にとっては、突然の話でした。

「下田先生は社労士を辞めて、沖縄に行っちゃったらしいよ」という話だけ私も人づてに聞いていたので、「どうしちゃったの???」という「?」だけ私の中に残っていました。

でも、先日お話を伺って、「沖縄に家もあるけれど、東京にもあるし、オフィスは東京に残っていること」「月の半分は経営者向けのコンサルやコーチング、グループコーチングなどの仕事を東京でされていること」が分かり、ちょっとほっとしました。

ただ、下田さんは今、沖縄での新たな企てを着々と準備しているのです。

それもまた、「社労士」や「コーチ」などの肩書の枠などから大きくはみ出した、スケールの大きい計画でした。

今、考えていることは大きく2つ

沖縄の話を詳しくする前に、東洋思想の話をします。

下田さんのお話では、コーチングのベースには東洋思想があり、下田さんも少し前から陽明学に興味を持ち始め、勉強をはじめたそうです。

その陽明学のなかには、「良知」という言葉があります。

「良知」は、ざっくり言うと
「教えられなくても、するべき正しいことを人はすでに知っている。そういう心」

だそうです。

たとえば電車で席に座っていると、目の前にお年寄りが来た。
席を譲ろうかな、と思う。それが良知。

席を譲った方がいいんじゃないか、とはきっと誰でも思える。
その想いを行動として発揮できるかは別だけど。

ただ、席を譲った方がいいんじゃないかという想いは皆あるから、席を譲れないと、自分のその心に自分でいたたまれなくなって、寝たふりをしたりしちゃう。

なるほど。

でもみんな、ちゃんと良知はもっているわけだから、それにきちんと気づき、発動させられるようになればいい。

そのための社員研修や理念研修をしていきたいと思っている。

それが今、下田さんが考えていることの1つだそうです。

そしてもう一つは、

陽明学の観点から、経営者の相談役になれる人を増やしていきたいと思っている。

shimoda5そのために、月に1回、陽明学の権威である難波征男先生に講師をお願いし、社労士を中心にした勉強会を開いているということでした。

私は知らなかったのですが、昭和までの歴代首相には陽明学者の顧問がついていたそうで、「平成」という元号を考えたのも、当時有名な陽明学者だったとのこと。

そう考えると、陽明学を学んだ人が経営者の顧問になるというのは、理にかなったことなのですね。

経営者のためのゲストハウスと、生き生きと働ける場所

で、沖縄でされている準備の話に戻るのですが、下田さんはこんなふうに話していました。

沖縄にリトリートスペースを作りたいと考えている。

さっき話した、良知に気づき、発揮できるようになるための研修なども、都会の会議室で行うより、森や海に囲まれた場所の方が適していると思うんだよね。良知が開きやすい場所、ということで。

だからそのリトリートスペースには、まず研修スペースを作りたい。

それから、経営者が一人になれるゲストハウスも作りたいと思っている。経営者がそこにしばらく籠って、先のことをじっくり考えたり、本当に大切なことに気づける場所として。

そういう自然豊かな、いい環境で自分と向き合えば、“自分だけ儲けられればいい”という発想にはならないと思う。そうでなくて、“自分の会社が良くなれば、社会全体も良くなる”と考えて、先のビジョンが描けるように思う。

うわぁ、素敵です!

先に、下田さんは1年に1回ホテルに泊まって経営戦略を考えているということも書きましたが、そういうことを、自然の中の“ゲストハウス”でできる経営者って、しあわせですよね。

そして下田さんの話はここで終わらず、さらに素敵なビジョンもありました。

その研修スペースやゲストハウスの周りには、人が本当に生き生きと働ける場所を作りたい。
人工的な加工をされていない本物の塩作りとか、自然栽培の野菜などを作れたらいいと思っている。
そこでは、障がい者や、都会では色々な事情があって働けなくなってしまった人に働いてもらう。

そこで作った塩や野菜を使って、ゲストハウスに泊まる経営者に食事の提供もしたい。障害を持った人や様々な人が働くそのリアリティを経営者に感じてもらうことで、新しい価値観の提供もできると思うから。

下田さんは以前から、DMを発送するときには障害者の施設に頼んだりもされていましたが、その想いがさらに進んでいるのも、とても嬉しかったです。

下田さんは、「まだこの1年は、沖縄に住んで、沖縄を肌で感じて、ここでいいのかを確かめるような準備期間だったけれど」と言われていましたが、下田さんならこのビジョンをしっかり形にしてくれるのだろうな、と思います。

カンボジアにある伝統の森がモデル

dentounomoriちなみに下田さんのリトリートスペースには、ひとつのモデルがあるそうです。

それは、カンボジアにある伝統の森

カンボジアのその地区は、ポル・ポトの内戦で当時若者だった世代がごっそりいなくなり、今は老人と若い人だけになってしまっています。そのために、伝統も途絶えかけた、と。

でもその途絶える寸前だった「クメール織り」の伝統を復活させようと、立ち上がった日本人がいました。それが森本喜久男さんという方で、その森本さんがクメール織り復活のために作った場所が「伝統の森」です。

下田さんは、そこに2014年と2015年に訪れ、感銘を受けたと言います。

電気も水道もない田舎なのだけれど、その場所全体に、しあわせで豊かな空気感が満ちていた。

ただ、それだけなら、感動はするかもしれないけれど、それで終わっていたかもしれない。

そこがすごいのは、環境とビジネスが両立していたこと。

そこで作っているシルクは本当に上質で、世界の一流ブランドが提携を申し出ているくらいの高級品になっている。それが、すごいな、と思って。

shimoda4だから、下田さんも沖縄で作る塩は、上質な本物の塩にしたい、という話でした。

(右の写真は、下田さんに頂いたクメールシルクのハンカチ)

大切にしているのは、湧きあがってくる感覚

そんな下田さんに、「仕事においても、人生においても、大切にしていることは何ですか?」と訊いてみました。

その答えは、「感覚」とのこと。

自分の心から湧き上がってくることに従っていれば、間違わないと思う。
それが私利私欲から来るときもあるから、それとは区別しないといけないけれど。

今まで僕は、大事なことは全部、根拠なく、感覚で決めてきたと思う。

へぇ、と思いました。
今まで下田さんを「感覚の人」とは思っていなかったので。

でも、「良知」というのが、誰でもが心の奥に持っているものなのだったら、頭でつべこべ考えるより、その「良知」を感じ取り、その感じ取ったままに動くことが大事なのかもしれませんね。

shimoda3下手に、「これでは利益が出ないのでは」「もっとこうした方が効率的なのでは」と頭で考えたり、分析するから、物事はややこしくなるとも言えます。

感覚で動くのは得意な人と苦手な人がいるようにも思いますが、小さなことから自分の「感覚」を大切にして、行動を決めていけば、「感覚に従えば、間違わない」という自信がついて、少しずつ大きな決断ができるのかもしれません。

下田さんが、「沖縄に移住する」と決めて、実行したように。

(右の写真は、下田さんの趣味のロードバイク。エレベーターで下田さんの事務所が入っている8階に下りると、目の前にあり、驚きます(笑))

お役目につながっているときには満たされているし、疲れない

下田さんにも、「自分の心を満たすためには、どうしたらいいと思いますか?」「好きなことを仕事にするにはどうしたらいいでしょう?」という恒例の質問もしてみました。

その答えもまた、深いものでした。

あれをしたい、これをしたい、というのは私欲。
好き、嫌いというのも私欲。

私がこうしたい、あぁしたい、という私欲で考えていくと、つらくならない?と思う。

世の中「私」の思い通りになんてならないんだから。

でも、もっと遠目になって、自分のお役目は何かということを考えると、宇宙の法則に乗れると思う。自分のお役目というのは、神様が、一人一人に決めているもの。

そのお役目に気づいて、それにつながっていれば、その仕事が好きとか、楽しいとか、そういうレベルではなく、ストレスが溜まらないし、心も満たされると思う。

つらい経験をしたとしても、それはその経験を活かして、世の中に、あなたにしかできない何かをしていきなさいというメッセージ。

自分の今までを振り返って、すべてに意味があると思って、自分のお役目は何かを考えてみるといいと思う。

なるほど~。

私の「お役目」が、様々、キャリアに躓きまくった経験を生かし、この「素敵な仕事人」インタビューをして回ることだったら、いいな、と思います。

下田さんにも、本当にたくさん大切なことを教えて頂きました!
ありがとうございました。

今度は、沖縄のリトリートスペースができたときに、インタビューに出向きたいです♪

 


★下田さんのオフィシャルサイト The Top Coaching
→ http://www.sr-espacio.jp/

短絡的な答えではなく、長期的なビジョンで経営に関する気付きを与えてくれるコーチや経営コンサルタントを探されている経営者の方は、是非!

★下田さんのブログ 南の風~沖縄東京デュアルライフ~
→ http://ameblo.jp/srnaoto/

沖縄と東京のダブル生活をすると、現実問題として何が起こるのか。堅苦しくない、気軽に読めるブログです。

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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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>> メインサイト「凪」



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