病気や環境を言い訳にしない:大野更紗さん

2011年に「困ってるひと」という本がベストセラーになった大野更紗さん。

「困ってるひと」というのは、大学院時代、急に難病を発症し、すさまじい闘病生活を送る彼女自身の闘病記です。

私もこの本を、2012年に読み、彼女のその後が気になっていたのですが、先日新聞で、病気の発症によって一度諦めかけた研究の世界に戻り、今も車椅子生活でありながらも、研究者として過ごしているということを知りました。

「困ってるひと」

大野さんがかかったのは、自己免疫性の難病「筋膜炎脂肪織炎症候群」と「皮膚筋炎」という病気です。

名前を聞いてもどんな病気なのか全く分かりませんが、それは私が医療の分野に疎いからではなく、日本では非常に稀な病気なのだそうです。

そのせいで、大野さんは、病名が分かるまでにも1年ほど、様々な検査を受け、適切な治療に辿り着けないまま、病院をたらいまわしにされたり、ただただ痛いだけの検査を受けては不毛に終わる「闘病」生活を強いられます。

ただこの本がベストセラーになったのは、「若い女性の悲壮な闘病記」だからではありません。

書かれていることは、かなり壮絶なのですが(麻酔なしで筋肉を切り取るとか……)、文体が非常に軽く、ポップなのです。

大野さんのインタビュー記事を読んだら(mammo.tvから引用しています)、

「とにかく読み物としておもしろいもの。そして、コミュニケーションが断絶した状況の中で、年齢や社会階層は関係なく、誰でもどんな読み方でもできるものにしたい。そういう思いで書いていました」

と語られていましたが、本当に「読み物としておもしろい」。笑いもあるし、彼女はこれからどうなってしまうのだろう、というドキドキする、エンターテイメント性がある「作品」になっています。

「困ってるひと」を生み出す社会

ただ、この作品で多分大野さんが一番伝えたかったのは、「困っている人」と、「困る人を生み出す社会の問題」についてではないかと思います。

大野さんは、病気を発症したのが「大学院生」のときだったのですが、大学院では、ビルマ難民問題の研究をし、現地にもよく行っていたそうです。

でも、その頃は、「難民」とか「困ってるひと」というのは、自分とは違う世界の人で、自分は支援する側だと思っていたのが、急な病で、自分自身が「難民」のようになってしまいます。

最初の1年は病名もつかないから、診断書も出ない。大学は? 仕事は? 研究は?と、先が見えませんし、国からの助成金も出ません。家族や友達に頼るにも限界があるし、自分自身も自力ではほとんど動けない。

……これって、「難民」以外の何者でもないのではないかと、思うわけですね。

さらに病名がついても、希少すぎて、難病指定された病気じゃないから国の制度が使えないとか、さらに「おかしなこと」がたくさんあって、余計に追い詰められていくのです。

ただ、そんな自分の状況を、大野さんは、「エンターテイメント」の本にしています。多分、発症からしばらく時間が経ってから執筆に取り掛かったのだとは思いますが、それでも、今現在でも治っていない、多分一生つきあっていくしかない病気について、嘆くわけではなく、社会をただ責めるだけではなく、「こんなふうに困っている人がいるのです」と、距離を置いて表現できるというのは、すごいことだと思います。




平等とハンディキャップ

そして、今は、ビルマの難民などの「東南アジア研究」からは離れ、難病政策を社会学的に考える研究をされているそうです。

朝日新聞では、そのように専攻を変えて、改めて研究の道に戻りたいと思ったとき、担当教授に、

「必要なことが滞りなく行えるよう支援はします。でもあなたは、勉強が足りない」

と、社会学の研究の経験が足りないことを指摘されたことについて、

「一人の学生として平等に扱われていると感じました。私の疾患ではなく、資質、能力、可能性を見て判断してくれた」

とコメントされていました。

今まで「平等」に扱われることすら難しかったのだということですよね。

たとえば、小さな子供を育てながら働くというのは、仕事の面から見ると「ハンディキャップ」を抱えているとも言えます。

障害があるとか、大きなハンディキャップでなくても、人はちょっとずつ何らかのハンディキャップを負っているとも言えるかもしれません。

ただ、自分の「ハンディキャップ」を挑戦しないことや逃げるための言い訳にしそうになったとき、こういう大野さんのような人の存在に触れ、自分が今できることは何なのか、改めて考えるというのも大切ですね。

そして、ちょっと話は変わりますが……
いつも体が痛い、痛いと言っているおばあさんに、それでもちょっと無理をして、その人よりもっと大変な人の面倒を見るボランティア活動をしてもらったら、逆に体調が良くなってきた、という話を聞いたことがあります。

社労士の世界でも今、癌などの病気を抱えながらも仕事を続けていく人の就労支援をするという仕事が注目を浴び始めていますが、どんな状況にいる人でも、働いたり、社会の中で何らかの役割を担い、社会とつながる感覚を持つって大切だなということも感じます。

そのためには、余裕のある人は「支援」を考え、そうでない人は、自分の恵まれていない状況をただ悲観するのではなく、「それでもできることはないか?」「それだからこそ、できることはないか?」と考えることも大切なのかもしれません。

自分は「支援される側だ」と思っているうちは、前に進めないのではないか、ということも、大野さんの姿勢から考えさせられました。

 

最後に、先も引用させてもらったmammo.tvの記事から、素敵だと思った大野さんの言葉をいくつか。
(mammo.tvは、高校生向けのサイトらしいですが、インタビューの内容が深くて、素晴らしい)

とにかくずるさや矛盾に対峙すること。おかしいと思ったらおかしいと言う。

きっと自分が思っているよりずっと周りは共感してくれる。私はそういう人がカッコいい人だと思います。そうやって人と人、人と社会が分断された状況は解体されていく。私は物書きとして、そういうことを仕事としていきたいと思っています。

 

「動かし難い現実がそこにある」と思ってしまいがちですが、言葉が現実をつくっていく。だから語ることは社会をつくること、現実をつくることでもある。

 

私も毎日たいへんでつらいことがたくさんありますが、だからこそおもしろいこともあります。もちろん、うまくいかないですよ、恥ずかしい思いや失敗ばかり。自分ができないこと、知らないことを、知る。でも、それが本来の「まなぶ」ということなのではないでしょうか。

 

自分を包んでいる障壁は、自ら動けば勝手に壊れていきます。たぶん生きる限り、その繰り返しです。

執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

オフィス言の葉代表・起業家支援ライター

千葉県市川市を拠点に「インタビュー記事作成」「理想のお客さんと仕事を引き寄せるプロフィール文作成」「ライターによるホームページ制作」などをしております。

書籍や雑誌の記事執筆、イベントの参加レポート作成なども承ります。
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