少し前に朝日新聞で読み、心に残っていた人のことを、今日は書きたいと思います。
岸田さんは小学校の先生をされていましたが、今年3月に定年退職されました。先生時代、強く感じていたのは、「食事を満足にとれない子がいる一方で、年間100万円以上の塾代を払って学んでいる子がいる」という格差をどうにかしたいという想いだったそう。
しかし、公立の学校の先生という立場では、できることに限界があります。
そこで岸田さんは、定年の5年ほど前から、学び塾「猫の足あと」という団体を立ち上げます。
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「猫の足あと」の取り組み
学び塾「猫の足あと」は、東京都西東京市(田無駅のあたり)にある、塾に通っていない小中学生に無料で学習支援をする場です。
月曜日と木曜日の16時~18時が「小学生宿題クラブ」
木曜日の19時~20時45分が「中学生勉強会」
月曜日の19時~20時45分が「中3勉強会」
というスケジュールで、中学生の勉強会では、途中に30分休憩時間があり、そこで無料で夕食も振舞われるということ。
塾に通えない子には、栄養バランスのいい食事がとれなかったり、孤食だったりする子も多いようで、勉強だけでなく、この「食事」の時間も大切だとか。
勉強を教えるのは、ボランティアの大学生と、岸田さん家族。
「岸田さんの家族(大学院を今年卒業した長女と、大学生の長男)」も、団体の立ち上げの正式メンバーであり、この活動の核のメンバーとして関わっているというのも、素敵です。
「猫の足あと」の目標は
1.貧困と格差から子どもを守る。未来に希望がもてるよう、必要な子どもたちに学習・食・住居を提供する居場所をつくる
2.子どもたちとともに自主的な学習をすすめ、人間としての権利を尊び、科学的真実を愛し、民主的社会の成員として成長できるよう支援する。
ともサイトには書かれていましたが、この理念にも、長年教育に携わってきた方のにじみでる想いを感じます。
言うは易し、行うは難しなことばかりです。
今年、「学び塾」を「ハウス」に
上の「目標」に、「必要な子どもたちに学習・食・住居を提供する居場所をつくる」があると書きましたが、今年3月に教員を定年退職したあと、岸田さんは近所で売りに出ていた土地を買い、そこに「支援ハウス」を立てます。
それまでは、自宅に小中学生を呼ぶ形で行われていた塾でしたが、新しく建てた家の1階を学び塾の場とし、2階を5つの部屋に分け、そこを「児童養護施設の出身で家族の支援を受けにくい若者や、奨学金の返済や非正規雇用などで経済的に余裕がない若者たち」に「2万5千円~3万2千円(他に光熱費や共有スペース使用料として月1万円)」で貸し出し始めたとのこと。
この部屋を借りている人も、木・金の中学生の勉強会の際には、一緒に1階で食事をとることもできるとか。
岸田さんがされたいのは、格差解消だけではなく、近年失われてきた「家族のようだった地域社会の絆」なのかもしれません。
猫の足あとハウス自体のサイトは見つけられませんでしたが、下記に情報が載っていました。
https://www.kodomohinkon.go.jp/matching/search_user_support.php?maid=37
「やりたいこと」をやるベストタイミングは人それぞれ
「やりたいことを仕事にする」というと、「今の仕事は辞められないから」とか「家族を養うために、安定した収入が必要だから」と、そこで思考がストップしてしまうことも多いと思います。
でも、本当にしたいことがあれば、今の仕事を続けながら、細々とであっても何かできることはあるはずだし、岸田さんのように定年まで立派に勤め上げたあと、その退職金を使って、今まで溜めこんでいた想いやエネルギーを形にしていくことだってできるんですよね。
定年後だからこそ、お金のためではなく、本当に想いだけで動けるというメリットもあるのでしょうし。
社労士の開業塾などでは、なんとなく「すぐに仕事を辞めて開業する人は度胸があってすごい」と思われる風潮があり、色々な事情で、開業したいけれど、今の会社を辞められない人は「まだ仕事、辞められていないんですよ……」とどこか申し訳なさそうにしているところがありました。
でも、それって、本当はおかしいですよね。「やりたいこと」をやるタイミングというのは、きっと人それぞれで、みんな、本当は自分のベストタイミングを知っているんじゃないかなと思います。
ということで、今日は定年まで与えられた役割を勤め上げつつ、自分の想いをしっかり育て、それを形にしている素敵な方として、岸田久恵さんを紹介させてもらいました。
[…] 定年後「今までの仕事でできなかったこと」をする:岸田久恵さん […]
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