先日、教育テレビをつけていたら、ジャパネットたかたの高田元社長が出て、小学生に「伝わるとは」というテーマで授業をしていました。
小学生に原稿を書かせ、2日間かけて、最終的にビデオレターを作らせるという内容です。
小学生向けの授業でしたが、物を書いたり、部下に指導したり、映像を作ったり、絵をかいたり、人に何かを伝える仕事をしている人には非常に含蓄のとんだ内容だったので、ご紹介します。
「伝わる」ために必要なのは具体的なエピソード
授業で作ったビデオレターは、「誰でもいいので家族に、自分の伝えたい想いを伝えるものを作ってみよう」という設定でした。
小学生たちは、最終的には、誰かしらに熱い「ありがとう」を伝えるような内容を仕上げていました。
ビデオカメラの前で、涙を流したり、声をつまらせる子も多く、その子の家族でもなんでもない私も、ぐっときました。つまり、「伝わった」んでしょうね。
原稿を書くときに高田社長が子供たちに伝えていたことで印象に残っているのは、
いつもありがとう。というような言葉だけじゃ伝わらない。
とおりいっぺんのことを書くだけじゃ)30秒くらいで終わっちゃう。
30秒で終わってもいいけれど、30秒で伝えるのは難しいよ。想いを伝えようと思ったら、具体的な話が大切。
ありがとう、というのは、いつ感じるの?
それ以外に感じる思いはないの?
というような言葉(正確ではないですが、大体こんな内容、ということで)。
そう言われた子供は、お祖母ちゃんへの感謝の気持ちを伝えたいと言っていたのですが、「叱られたときには、もっと違う気持ちになる」ということを話します。でもそのときも「怖い」とも思うけれど、それ以上に、「叱られるようなことをした自分が悪いなと思う」と。
そして、少しずつ具体的な思い出を探し当て、エピソードにまとめていきます。
最後、仕上がったビデオレターをおばあちゃんが見るシーンもあったのですが、「伝わっている」ことが本当に、分かりました。
大切なのは、うまく話すこと、書くことじゃない
そして映像を撮る前に、高田社長はこんなことも言っていました。
上手くしゃべろうなんて思わなくていいよ。
言葉を忘れて黙ってしまったら、そのまま黙ったままでいてください。
その方が、伝わるから。
確かに、子供たちがビデオの前で、セリフを忘れてしまったり、感情がこみあげて言葉を途切れさせてしまう場面もあるのですが、一生懸命、伝えるべき言葉を探す間や、自分の感情と向き合う時間は、そのままで、流暢な言葉よりずっと「伝わる」ものになっていました。
私は中学1年の頃、国語の先生(まだ若い女性の先生)のことが好きだったのですが、1年で学校を辞めてしまいました。
ショックでしたが、そのあと先生にそれまでのお礼の手紙を書きました。
ちょうどその先生は「敬語」などを教えてくれていたのですが、まだ中学生の自分には敬語を正しく使えているのか自信がなく、手紙に「敬語などいい加減で、文法もおかしい手紙になってしまっているかもしれませんが……」というような断りを書いた記憶があります。
でも先生は、「手紙で大切なのは、正確かどうかより、想いが伝わるかどうかですよ」と返事に書いてくれました。
以前、このブログでも、どうしたら文章が上手くなるか、ということを書いたことがありますが、もしかすると文章でも話し方でも、一番の上達方法は、「本当に伝えたいことを伝えたい人に伝えること」なのかもしれません。
そんなことを感じた、いい番組でした。
高田元社長は、通販の仕事をしているあいだ、ずっと、「どうしたら伝わるのか」を考え続けていたのだろうなということも分かる内容でした。
私も、もっともっと、伝えることについて、考えていきたいと思います。
そしてこの番組のタイトルが「伝える」ではなく「伝わる」だったことにも、非常に大事な意味が込められているように思いました。
伝えたつもりじゃダメなんですよね。伝わらなきゃ。