クルム伊達公子「幸福論」を読む

26歳で現役引退してから、11年のブランクを経て、37歳で再びプロテニスプレーヤーとして復帰し、現在も活躍されているクルム伊達公子さん。

2014年の9月に出されていた本をたまたま見つけ、読んでみました。

 

ゴールにたどり着いたときの幸福は一瞬

この本に繰り返し書かれているのは、「26歳で引退を決意した頃は、すべてのことが「テニスのために~しなくては」という義務感になってしまっていて、楽しめていなかった。でも、今は若いころより体力は落ちたものの、テニスが好きだし、テニスに関わるすべてが好きだ」ということです。

当時は、世界のトップ3を目前にして、トップ3に入りたいという思いと、トップ3に入ったらさらに様々な“犠牲”を払わなくてはいけなくなるという思いが入り混じり、引き際を感じたのだ、と。

まだ若く、しかも順調に結果も出しているなかでの引退発表で、傍から見たら「え?」という感じでしたが、その渦中にいる本人にとって、周りからのプレッシャーと言うのは、一般人が想像できないほどのものなのでしょうね。

食事もトレーニングも、日々の生活すべてをある意味テニスに捧げていた人生。そこから自由になって、「自分がやりたいからやる」と思えるようになったとき、同じ「走る」ということでも、ずっと楽しくなり、周りの風景や風などを感じる余裕も出てきたそうです。

ゴールを設定して、がむしゃらに頑張る時期というのも大切ですが、「ゴールにたどり着いたとき、手に入る幸福感」だけでは、人は生きていけないものなのだということが、よく伝わってくる本でした。

女性の人生には選択が多い

ところで、女性は男性に比べて鬱になりやすいと言われています。

それは女性の方が、幸福感を感じるホルモンの量が少ないから、生理や妊娠・出産などで頻繁にホルモンバランスが崩れるからという肉体的な理由も大きいようですが、「女性の方が、人生の選択肢が多く、迷うことが多いから」という説を唱える人もいます。

伊達公子さんも、26歳で引退し、結婚した後は、子供が欲しいと思い、不妊治療もしたけれど、授かれず、結果が出ない不妊治療に苦しんでいるときに、ドリームマッチの声がかかり、そのまま「現役復帰したい」という思いが募っていったということを書かれていました。

また、ドリームマッチでは、同じく現役を引退していたグラフと対戦したのですが、グラフは「(あのサイボーグのような強さだった彼女が)まさか」と感じるようなレベルのプレーだったそうです。

そしてグラフは、「今は子供といっときも離れたくないの」と試合が終わるなり、シャワーも浴びずに帰っていったというエピソードが書かれています。

逆に49歳まで独身のまま現役を続けたナブラチロワの生き方やプレーに、伊達公子さんは刺激を受けます。

人生の選択には、自分で選べるものもあれば、選べないものもあり、思ったままに人生を送れる人の方が少ないのかもしれませんが、今、自分が歩んでいる道が正解だったのだと信じられるよう、日々、「ここ」を大切にして生きるのかもしれませんね。

伊達公子さんの「幸福」論

最後に、伊達さんは、「幸福」についての考えをこうまとめています。

他人から見れば厳しい環境の中にいると感じられるような状況でも、実はその状態で十分心を潤わせているという経験は誰でも思い当たるのではないか。

だからといって、当然のことながら、それは何もせずに突然降ってくるような類のものではない。

現状を受け入れ、毎日の生活を丁寧につくること。何かをしたい、成し遂げたいといった大きな目標があるのであれば、それに向かって、日々の努力を怠らないこと。そうしているうちに、自分の意識を超えたところでいつの間にか幸福が訪れるような気がする。

それは、限界まで走り続けるうちにやがて苦しさが高揚感に変わるというランナーズハイにも似たような感覚かもしれない。

狙って到達できるようなものではない。がんばって、積極的に取りに行くというような代物でもなく、ただ目の前にある日々の目標を目指しているうちに自分の元へ訪れる、やってくるのだ。

もちろん、うまくいかないこともある。その時、不運を嘆き、そこに至る前の道程を簡単に放棄してしまうのではなく、その不運や不都合さえ受け入れて走り続けるうちに、自分の意識を超えたところにやってくる。

自分がいる場所が楽しいのか辛いのかなど考えない。その状況がいいのか悪いのかといった他者の評価も関係ない。そんな比較とは無縁な状態に、自分自身気づかぬうち、いつの間にかいられるようになることが、幸福なのではないか。

ランナーズハイのような感覚、なんか素敵な言葉ですね。

執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

オフィス言の葉代表・起業家支援ライター

仕事では主に、起業して間もない人、これから起業しようと思っている人に対する文章支援を行っています。「ライターが作るホームページ」サービスも人気です。

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