以前、「敵を味方にする方法」という記事で、お互いがお互いを「問題」と思うのではなく、お互いが実は共通で持っている「問題」を探しだし、それを解決するべくタッグを組むと、いつの間にか「敵」は「味方」になっています、ということを書きました。
でも、なかなか「共通の問題」を探し出すのは難しいものです。なぜなら、人間には感情があるから。
対立する相手がいる場合、本当に問題なのは、相手の行動の一部や、環境だったりするのですが、つい「相手」全体が悪いように感じ、冷静に問題を分析できないことも少なくありません。
そんなときにも、冷静に相手の立場に立って考えられるようになる手法を今日はご紹介します。
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エンプティ・チェアを試してみよう
そんなときに有効なのが「エンプティ・チェア」と呼ばれる方法です。
エンプティとは「空」という意味の英語ですので、直訳すると「空の椅子」ということになります。
なぜ椅子が空なのかというと、椅子は2つあるのに、座るのは1人だからです。
つまり、椅子を2つ用意するのですが、座るのはあなただけです。向かい側には話したい相手がいると仮定します。そして、自分自身が一人二役を演じるのです。
まず自分が、「自分」の椅子に座り、相手(本当は空の椅子)に不満に思っていることを言います。
そして、言い終えたら、次は自分が相手の椅子に座り、相手の気持ちになって、「自分」に言葉を返し、会話をするのです。
エンプティ・チェアの会話例
「敵を味方にする方法」で書いた例(伝票整理など仕事が残っていても定時に帰ってしまう販売員と、その人に腹を立てている店舗のマネージャー。ここでは自分はマネージャーの側だとしましょう)をそのまま使えば……
まず最初の一言は、
自分「店を閉めたあと、伝票の整理もしないで帰るあなたの態度は無責任にもほどがある」
などとなるでしょうか。相手は「仮」なので、本人を目の前にするより、はっきりとした意見が言いやすいかもしれません。
でも、相手に言いたいことをいったら、今度は、自分が「相手」を演じなくてはいけません。今度は、自分が相手の椅子に座り直します。そして、相手の立場や気持ちになって、さっきの「自分の言葉」に反論します。
相手(本当は自分)「でも、私にだって都合があります。私は勤務時間内で十分、成果は出しているつもりです」
はじめは、相手の言葉を代弁することに違和感があるかもしれません。でも、この「会話」をしばらく続けてみます。
自分「確かにあなたが売り上げに随分貢献しているのは認めます。でも、それとこれとは違う問題でしょう」
相手「どう違うんですか? そもそも、勤務時間内にできるだけ仕事が終わるように店をマネージメントするのが、マネージャーの役割じゃないんですか?」
自分「確かに、できるだけ勤務時間内に仕事が終わるようになるのが理想ではあると思う」
相手「それなら、店を閉める前に、少しでも伝票の整理を進めたり、明日の準備ができる方法を考えてみてもいいのではないですか」
……と、前向きな話し合いにまでたどり着くかは分かりませんが、やってみると必ず、何かしらの気づきはあるはずです。
それは、相手にも相手の事情があり、感情があるということです。
実際に相手としっかり向き合って話すことも大切ですが、冷静な話し合いもできないという状況だったり、話し合いをすることで事態が悪化しそうだというときには、是非この方法を試してみてください。
エンプティ・チェアは過去のことにも使える
「エンプティ・チェア」は、今、抱えている問題だけでなく、今はもう亡くなってしまった親との確執を解くためや、恋人に別れを告げられたものの、なぜ恋人の心が自分から離れたのか分からず苦しいときなどにも使えます。
「あのとき、ああ言っていれば良かったのに」「あのとき、こうしていれば、こんなふうにはならなかった」そんな後悔を抱えているときに、実際には決してやりなおせない「過去」を理想の形で演じ直すことで、記憶の中の過去を塗りかえ、新しい一歩を今、踏み出す助けになることもあります。
是非、いろいろな場面で使ってみてくださいね。
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