先週、厚生労働省の雇用政策研究会が「2030年の労働力推計」というものを発表しました。
その推計によりますと「今後、日本経済が実質ゼロ成長のままで、さらに女性や高齢者の労働参加が進まない場合、就業者数は2014年と比べて790万人減り、5561万人になる」とのこと。
平均で15%ほど、東京でも5%の減。地方によっては「27%減(秋田)」「24%減(青森)」という県もあり、かなり深刻な数字です。
Contents
「兼業OK」の会社
この数字の公表を受け、「今後、地方の企業が人材を確保するためには?」といったテーマのNHKの番組を見ました。
今でも地方では人材の確保が難しいわけですが、そのなかでしっかり人材を確保できている企業は、どのような対策を講じているのかということを探る内容でした。
いくつか取り組みが紹介されていましたが、私が気になったのは「兼業をOKにして、多様な人材が集まるようにする」としていたIT企業の例です。そうすることによって、学習塾を経営したり、りんごを生産する農家をしながら、IT企業の社員もできると、紹介されていました。
「兼業」については、積極的に奨励する企業は少ないですが、隠れて兼業したことがばれ、万が一それで「解雇」ということになっても、「兼業ぐらいで解雇は行き過ぎ」と裁判などでは判断されることが多いと言われています。
(同業の掛け持ちで、一方の情報を他方に流すようなことをしていたら、もちろん例外ですが。でも、特に機密情報を扱っているわけでもない平の社員が、異業種の仕事をして金銭を得ていても、本業中に居眠りを繰り返すとか、欠勤が多いとか、よほど本業に差し支えない限り、法的には社員側が有利です)
今後、マイナンバーが普及すると、収入がその番号で一元管理され、副業がばれるのではないかという話も出ていますが、どちらにしても、企業側に「兼業禁止」とはっきり言い切る権利がない以上、むしろ「兼業OK」とする方が、今後、企業も良い人材が採れるのかもしれません。
そんな、一つの可能性として、興味深く番組を見ました。
新たな意味合いでの「ワークシェアリング」
また、就業者数は15%ほど減るという予想ですが、フルタイムで働ける人の人数は、さらに大きく減少するかと思われます。介護や家の事情でフルタイムで働けなくなる人が増えるという予想もさまざまなところから出ているからです。
以前日本でも「ワークシェアリング」の可能性が議論されていた頃もありました。ワークシェアリングというのは、1つの仕事を短時間で働く人で分け合うというイメージです。
これは本来、今とは逆で、失業率が高い場合に「雇用を創出する」ために行う一つの方法として考えられるものです。しかし、フルタイムで働ける人が少なくなった場合、また違った意味で「ワークシェアリング」ということを考えないといけないようになるかもしれません。
また、企業側にも、時間ではなく仕事の成果で人の働きを評価する制度をしっかり作り、社員一人一人に「効率よくできる、得意分野の仕事」をできるだけ渡し、会社全体の「総労働時間」を減らすという思考も大切になってきそうです。
今後、働く側としては
ただ、今は採用が追いつかない状態の「売り手市場」ですが、これが本当に長期的に続くかは疑わしいと思います。
なぜなら、人材が雇えず倒産する企業、少子化によって売上が上がらず倒産する企業も当然ながら出てくるわけで、「企業が必要とする人材の数」自体も減っていく可能性が高いからです。
そして、自身が介護の問題などでフルタイムで働けなくなるかもしれません。
そんな状況を生き残るためには、働く側も、自分の「スキル」を磨き、短時間で成果を出す方法を考えること、そして、自分の「スキル」を「兼業」のイメージで、複数の企業に売り込めるくらい高めることが必要なのではないかと感じます。
つまり、正社員といっても、
- 自身が自分株式会社の社長として、自分自身を企業に売り込めるようにするくらいの意識
- 時間ではなく仕事の質と量で評価してもらおうと考える姿勢
が大切になってくるのではないかと思うわけです。