一昨日は「仕事を辞めたくなったら」という記事を書きましたが、自分が辞めたくなることもあれば、友達や同僚に「もう辞めたい」と相談されることもあるでしょう。
今日は、仕事を辞める、ということに限らず、人から深刻な相談を持ちかけられたとき、どうすればいいかについて、考えてみたいと思います。
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大切なのは、聴こうとする姿勢
心理学ではよく、「聴く」ことが大切と言われます。コーチングでもそうです。
ただ、そのあとに聴くスキルとして、「相手の言うことを鸚鵡返しにする」などと言われることが多いので、ちょっと本を読んだり、研修を受けたくらいの人は、「ちゃんと話を聴くためには、鸚鵡返しが大切」などと覚えてしまっている人が多いかもしれません。
コーチングでは、さらに、相手と同じ姿勢になる、同じ仕草をしてみるなどといったスキルも紹介されたりしますので、下手に少しだけコーチングを齧ってしまうと、「やることがたくさんあって、大変だ」と、そういう小手先のテクニックにだけ走る人も多いようです。
でも、聴くことに本当に大切なのは、相手が言わんとすることを「聴こう」とする姿勢です。
自分の意見を差し挟まず、まずは相手が話しているのを、頷いたり、軽く相槌を打つだけで、基本的には黙って聞く。
一番大事なのは、ただそれだけです。
でも、「それくらい分かっているし、できている」と思っている人が多いですが、自分の意見を差し挟まず、自分のペースで質問を投げかけることなく、ただ相手に寄り添って話を聴くというのは、思った以上に大変なことです。
安易に「大丈夫だよ」と言っていませんか?
私が心理学の勉強をし始めたとき、個別指導の塾の講師のアルバイトもしていました。
個別指導塾の講師の仕事では、勉強を教えるのと同じくらい、生徒の話を聴き、生徒のモチベーションをアップさせることが重要です。
私はあまりおしゃべりな方ではなく、むしろ口数は少ない方ですし、自分は話すことは苦手だけれど、その分、人の話を聴くのは得意だと思っていました。
でも、心理学の講座で「聴く」ことの大切さを知ってから、授業に臨んだとき、生徒が何か悩みを口にした際、自分が安易に「大丈夫だよ」と口を挟んでいたことに気づきました。
自分としては、良かれと思って口にしていた言葉でしたが、そんな「大丈夫だよ」という一言でも、生徒の話をさえぎっていることに違いはありません。
そう気づいた私は、安易に「大丈夫だよ」と言うことも、「自分はこうだった」と経験談を話すこともせず、相手が今、どういう状況で、どんなことを考えているのか、最後まできちんと聴こうと思いました。
相手の話を遮らないで、相手が満足するまで話させてあげるというのは、実はかなり大変なことです。忍耐と愛情と時間が必要な行為です。
でも時間をかけて、しっかり話を聴いてみると、自分が始めに「きっと、こういうことで悩んでいるってことだろう」と勝手に決めつけていたこととは違う、もっと深い悩みや、問題が出てきました。
やっぱり「聴く」って大切なんだと気付いたときでした。
相談をされたとしても、問題は相手のもの
この、聴くことの大切さを習うまで、私は、人というのはアドバイスを求めて話をしてくるのだろう、だから効果的なアドバイスをしなくてはいけない、と思っていました。
でも、自分で「今日はいいことを言った」と思ったときより、「けっきょく聴いていただけで、なんにも役立つことを言えなかった気がするな」と消化不良に感じたときの方が、生徒に「話せて良かった」と感謝してもらったりして、不思議に感じていました。
だから、「聴く」ということを意識し、「相手は話したがっている」ということを常に心においておくことで、見えてきたものがとても多かったです。
私が心理学を習った師の一人、日本メンタルヘルス協会の衛藤先生は、
その人が抱えている問題というのは、その人に与えられた課題です。
聴く人間は、それを意識していないといけない。自分が代わりに問題を解いてしまったら、そのときはいいかもしれませんが、相手の成長の機会を奪うことになるのです。
そして、そういう関係は、依存になる可能性もあります。
と言われていました。
「ガンッ」と頭を殴られた気分でした。
友達や同世代の同僚などの話はしっかり聴けても、子どもや後輩からたとえば「学校に行きたくない」とか、「仕事を辞めたい」と言われたりすると、つい「どうして?」とすぐに問い詰めたり、「大丈夫よ」と安易に慰めたり、自分も大変なころを乗り越えたという話をしてしまったりするかもしれません。
でも、まずは相手が本当はどうして学校に行きたくないと思っているのか、会社をやめたいと思っているのか、本当の気持ちを汲むまでは、自分の口はぐっと閉じておきましょう。
それが本当に相談に乗るということであり、人の話を聴くということです。
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