「過労死」について考えること

最近、「長時間労働が原因で亡くなったから損害賠償を」という裁判が増えていたり、そこで大きな額の支払い命令が出たりして、「過労死」が話題になることも多いです。

社労士は、
「社員が過労死したら、何千万という損害賠償金を払わなくてはいけなくなりますよ。そうしたら、倒産しちゃうかもしれませんよね。その前にどうにかしましょう」
と、企業に警鐘を鳴らす立場にいます。

もちろん「過労死」する人は1人でも出してはいけません。

しかし、最近は学生のなかに、「過労死しないような会社に入りたい」と言う人もいるということで、なんかそれって、ちょっと違うんじゃないだろうか……と私は違和感を覚えたりしています。

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実際、「過労死」する人の割合ってどれくらい?

厚生労働省が今年6月に発表した、平成26年度の「過労死等の労災補償状況」によりますと、
・「脳・心臓疾患に関する」支給決定件数は277件(うち死亡121件)
・「精神障害に関する」支給決定件数は497件(うち未遂を含む自殺99件)
でした。

つまり、昨年度、過労死や仕事が原因で自殺した人(未遂含める)が220人はいるということです。
しかし、今年(平成27年)7月のデータによると、雇用者数は5632万人といいますから、割合で考えれば、約0.00039%、つまり、256000人に1人ということになります。

もちろん、本当は過労死だったのに、労災として認められなかったケースもあるでしょうが、だからといって、桁が一つ違うほどではないかと思います。

繰り返して言いますが、「過労死」する人は、本当は一人でもいてはいけません。

でも、「過労死したくないから、大変そうな仕事は遠慮する」というのは、「飛行機が落ちるのが怖いから、海外旅行は一生しない」というのと、同じような”おかしな理屈”のように、私には感じられてしまうのです。




 

過労死の原因って?

なので、私なりに、「過労死」を考えてみました。

あくまで私の独自の考えですが、過労死の原因は大きく分けて2つだと思います。

■その1 ストレス■

どんなに仕事がハードでも、好きな仕事をしていたら、多分「過労死」はしません。

人間の体には自己治癒力というものがあって、少し風邪を引いたとか、お腹が痛くなったとか、そういうレベルの”不具合”なら、本来、薬など飲まなくても治ります。

病気が治らないのはなぜかというと、その自然治癒力を超えた病気があるとか(重い病気に掛かっている人は、治癒力がそちらを治すのに手いっぱいになっているので、風邪を引いた時に、そこまで手が回らず、肺炎になって、最終的に肺炎が原因で亡くなったりしてしまうのです)、自然治癒力が活発に活動するのを妨げる要因があるからです。

その自然治癒力の活動を妨げる、大きな原因が「ストレス」と言われています。

ただ、軽いストレスはあったほうがいいとも言いますし、同じ環境に身を置いていると、自分がストレスを感じているのか、麻痺してきてしまって、分からなくなってしまうということがあります(これが結構怖いことです)。

ですので、「最近、風邪がなかなか治らないな(もしくは、やけに頻繁に風邪を引くな)」とか、「頻繁に胃が痛くなるな」と思ったら要注意です。

労働時間の過少に関わらず、仕事がストレスになっている可能性があります。

※私は体が丈夫な方ですが、仕事のストレスがピークだったときには、肺に穴を開けました……(汗) 気胸という病気なのですが、女性の気胸は頻繁に再発する可能性があるから手術をしましょう、という話にもなっていましたが、結局手術しないまま、もう数年が経っています。仕事を辞めてからは、再発してないです。

(あ、でも、仕事にストレスを感じるというとき、悪いのは「仕事」だと思いがちですが、必ずしも、そうではないですよ。自分の仕事に対する考え方とか、自分と仕事の相性が悪いことも多いですから。→そのことは後日「ストレスの原因は、出来事より「考え方」かも」に書きました。)

 

■その2 睡眠不足■

一般的に「月80時間以上」残業すると、脳・心臓疾患が出るリスクが高まると言われています。

ただ、「月80時間以上残業をしている社員がいる」企業は7割だったというデータもありますし、「月80時間以上」残業している人は、決して珍しくありません。
つまり、「月80時間以上残業するような環境だったら、必ず過労死する」というわけでは、ないわけです。

労働時間を考えるとき、重要なのは「睡眠時間」とのバランスを考えることだといわれています。

労働時間が1日8時間だった場合、通勤・食事・身支度などに5時間、余暇をとっても、7.5時間寝られます。
それが、月45時間残業し、一日の労働時間が2.2時間長くなると、余暇の時間がなくなります(でも7.5時間寝ようと思えば、眠れます)。

月80時間の残業になると、1日の労働時間が平均3.7時間増えるので、睡眠に割ける時間が6時間になります。
同じように月100時間だと、睡眠時間が5時間になる、という計算になります。

厚労省の疫学的研究によると、
「一般に睡眠が6時間取れている人は睡眠不足による疲労の蓄積はないが、6時間を切る状態が2~6ヶ月続くと疲労が蓄積して血管病変を発症しやすくなり、5時間を切るようだと1ヶ月でも疲労の蓄積が見られるようになる」
と言われています。

若い人の方が体力がありますから、年配の人よりは倒れにくいかもしれませんが、若いからこそストレスに慣れていず、「睡眠不足からくる疲労」+「ストレス」で体を悪くしてしまう可能性は高いかと思います。

もともと脳や心臓・血管系の病気を持っている人は、特に気をつけなくてはいけません。

ただ、考え方によっては、労働時間が長くても、通勤時間が短いとか、労働時間中に仮眠を取れる環境があるとか、土曜日に10時間働いているから、月の時間が長くなっているだけで、平日1日6,7時間は眠れるし、日曜日は休めているから大丈夫、という場合もあります。

それに、必要な睡眠時間は、人それぞれという説もあります。

睡眠時間が毎日6時間を切る生活が続き、頭がうまく働かないとか、体からだるさが抜けないとか、不調を感じた場合は、早々に手を打つ必要がある、ということだけは覚えておくといいと思います。




ブラック企業は世間が騒ぐほどは多くない

人の死というのは、起こってしまったら取り返しのつかないことですから、当然、政府は力を入れて「過労死防止」の対策を打ち出します。

そのために、実際に起こってしまった事件を大きく取り上げて、「こんなことが二度とないように」という見せしめにすることもあります。

でも、ブラック企業は世間が騒ぐほどは多くありません。
そうだったら、世の中、過労死する人だらけのはずです。

これから社会に出る若い人には、そういうマイナスの情報だけ見ず、本当に自分をリスクから守るために、何に気を付け、何をしたらいいか、正しい情報を手にしてもらいたいと思います。

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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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2 件のコメント

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