新卒の就活で失敗したら、人生終わりは本当か?

私は大学で「文芸専修」という文章を書く専修に所属し、「文章を書く」ことを学んでいました。

その文芸専修の授業には(私が通っていたころは)、三田誠広先生という芥川賞作家の先生が学生の書いた小説を読んで、批評してくださるという講義もありました。

三田先生は、学生時代に小説家デビューされていますが、しばらくは”普通の社会人”としても働いていたようです。
その先生がよく学生の私たちに言われていたのが、

小説家になりたいと思っていても、まず3年は社会経験を積んだほうがいい。そういう経験は、大学を出てすぐにしかできないから。

ということと、

文学賞を獲ったからといって、すぐに仕事を辞めたらだめだよ。それだけで食べていかれるくらい稼げている人なんて、ほんの一握りだから。

ということでした。
(きっと、他にも色々アドバイスはあったと思いますが、私の頭に強く刻まれたのは、この2つの言葉でした)

確かに、今の日本では、新卒でどこに就職するかが非常に重要になっているかと思います。だからこそ、「全身就活」なる言葉も生まれ、就活が上手くいかないことで精神的に追い詰められる人も多いのでしょう。

多分、数字では捉えられていないと思いますが、就活が原因で自殺する人というのも、きっと一定数に上るのではないでしょうか。

 

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「死ぬな就活生」というメッセージ

少し前、朝日新聞のサイトに、「死ぬな就活生、内定ゼロでも逆転ある」という記事が載っていました。

「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」の著者「暇な女子大生」さんのインタビュー記事です。

彼女は「就職浪人して2年間で受けた会社はエントリーも含めて約300社、内定ゼロ」「社会から全く必要とされていないと感じて自暴自棄になり、死んでしまおうと思った」と記事で語っています。

でも、「就職するほかに生きていく手段を思いつかなかったから(違和感があったけれど)就職活動をした」という「暇な女子大生」さんは、結局、ブログが有名になり、そこからライターの仕事を得、今は出版の予定もあるそうです。

彼女の、
「本当のクリエーターは、自分の才能で自分を窮地から救う手段を生み出せる人だと思いますね」
という言葉が、心に響きました。

本人のブログをみたところ、ライターの収入でやっていけなくはないけれど、やはり改めて就職活動をもう一度したい、というようなことも書かれていました。

きっと、彼女の場合は、ブログでの実績をアピールできれば、新卒で就職したときより、いい仕事につけ、実際良い仕事をできるのではないかと思います。

組織に向かない人、面接が不得意なだけの人もいる

結局のところ、新卒の就活というのは、企業が「うちの会社に合う、従順でまっさらな人が欲しい」と思ってしているものです。

特にやりたいこともないのに、就活が嫌だからしないというのは、勿体ないと思いますが、たとえば「100社までは真剣にやる」などと決め、それでいい会社に巡り会わなければ、「自分は組織のなかで働くことには向いていないのだな」と考えるのもいいのかもしれません。

大学の外の世界をあまり知らないと、働く=会社に勤めるということだと信じ込んでしまいますが、世の中には、会社に属せずに働いている人は、たくさんいます。

あとは、本当は組織のなかでこそ実力を発揮できるタイプなのだけれど、自分の良さをつかみ切れていない、アピールするのが苦手という人も多いかもしれません。

そういう人のためには、やはりもっと人材系の企業が新卒採用にも積極的に関わって、マッチングさせていくというのも必要な気がします。
(少し前に、ベネッセが企業と学生のマッチングサービスを開始するというニュースもありましたが)

私も面接などはあまり得意でないのですが、面接も一種のスキルであって、得手不得手があって当然だと、私などは思います。

新卒で就職する以外にも、学ぶ機会はたくさんある

また、世間には「就職したら、最低でも3年は続けないと」というムードがあります。

ブロガーとして活躍しているイケダハヤトさんなどは、大企業に就職しながら11か月でやめ、引き抜かれるようにして入ったベンチャー企業も13か月で辞めていますが、ライター業とNPO支援のボランティア活動を両立させ、活躍されています。

ただやはり、年配の人からは批判されることも多いと本には書いていらっしゃいます。

でも、経験は時間で測れるものではないし、どんな企業でどんな仕事をするかによって、「3年」の意味は、当たり前ですが、変わります

私は新卒で入った会社には4年勤め、色々な経験をさせてもらい、楽しかったですが、自分が「仕事をするとはどういうことか」を真剣に考え、本当の意味で「社会人」になれたのは、独立を決め、その準備のために色々な先輩方の話を聴いて回ったときだったように思います。

与えられた仕事をすればいいのと、自分で仕事を作ったり、仕事をもらえるように動いたりするのは、全然違いますし、後者の視点を持った人は、企業の中には少ないのです。
(後者の視点を持った優秀な人がたくさんいる企業に新卒で就職できた人は、幸せだと思います)

今後、少子高齢化で、就職の現場はさらに売り手市場になっていくのかもしれません。
そんななかで、就職活動や、企業の採用に対する考え方、若い人の仕事に対する意識も、少しずつ変わっていくといいなと思います。

本当、新卒で就職するだけが人生じゃないですし、就活ででも、新卒で入った会社ででも「挫折」を味わってからが本当の人生の気もします。

「もう人生終わりだ」と思ったときこそ、「本当に他の選択肢はないのか?」「本当に違う道を生きている人はいないのか?」と、ちょっと視野を広げてみてほしいと思います。

※私自身もキャリアにつまづいてばかりの人生でした。でも、そんななかで感じているのは、挫折を味わった人のほうがいい人生を歩めるよ、ということです。そのことを最近、ブログにも書きました。こちらも是非、読んでいただけたら!→「人生やキャリアにおける挫折を味わった人が強いわけ

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執筆者:遊部 香(あそべ かおり)

文章を書いたり、写真を撮ったりしています。

現在は、『凪~遊部香official site~』で主に活動中。

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